日本にここだけ「廃校水族館」と「モネの庭」を支える人々

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 旅の醍醐味は、そこに暮らし働く人たちと出会うことだ。高知県東部には、日本に二つとない特別な場所をつくり出した人たちがいた。

■目標を大幅に上回る来館者

 室戸市の旧椎名小学校を改修した「むろと廃校水族館」(℡0887・22・0815)には驚きがいっぱいだ。地元の漁師が競うように提供してくれる展示用の魚には、取り立てて珍しい種類はいない。

 それでも昨年4月に初年度目標を13万人以上上回る17万人超の来館者を達成できたポイントは、展示の妙にある。跳び箱にはめられた水槽の金魚、屋外の25メートルプールを悠然と泳ぐサメやブリ、サバ……。机や椅子に身長計、視力検査表といった学校でお馴染みの備品も置かれている。

「目玉がないのが目玉。カップルは視力検査でイチャイチャし、お年寄りは身長を測って骨粗しょう症が進んでいないか確認するんです。リピーターは初めて来た同伴者にあれこれと説明したがるので、間違えて慌てさせたい。だから頻繁に“魚のクラス替え”をしています」

  こう言うのは館長の若月元樹さん。ひょうひょうと辛口のコメントを挟むあたり、館内のどの生き物よりも個性的かもしれない。

 もともとウミガメの研究者で、生態を観察するために産卵場所となる海岸がある室戸市に移住。ウミガメが網にかかる漁師たちの船に乗り、酒を酌み交わし、地元との関わりを深めていったそうだ。

 その後、廃校の跡地利用のアイデア募集で水族館とする事業案が採用されたが、周囲は猛反対。オープンが間近に迫る中で開かれた飲み会でも、「失敗する」「やめろ」と袋叩きに遭った。

「見るに見かねた漁師さんが、間に入り説得してくれたんです。そのときに言われたのが『1年後には老人ホームにすればいいんだから』でしたからね。誰も成功するなんて思っていませんでした。ただ、日本中どこを見ても、役人が主導する再利用が成功した例はありません。彼らが考えている反対のことをやればいいんですよ」(若月元樹さん)

 信念と気骨の人だ。

シュヴァリエが手掛ける美しい庭園

 フランスのモネ財団が世界で唯一、他国で名乗ることを認めた「モネの庭」(℡0887・32・1233)は、印象派画家クロード・モネの世界観を表現した美しい庭園だ。

 管理するのは、2015年にフランス芸術文化勲章のシュヴァリエを受章している庭師の川上裕さん。本国ジヴェルニーの「モネの庭」にも通って独自の精神性を学んだ。




「フランスと日本では植生が違うので、本国の庭をそのまま再現することはできません。ただ、世界に2つ同じものをつくる意味はありません。大事なのはモネが絵で表現した空間、雰囲気をつくることです。花の種類は違っても色は変えていません。その色について、本国の庭師から『春は点で落とせ、夏からはラインで出せ』と教えられました」(川上裕さん)

 2月末までは冬期メンテナンスのため休業中。4月25日には、モネが地中海沿岸ボルディゲラで描いた作品を基にした独自の庭「ボルディゲラの庭」も完成の予定だ。

岩崎3代の生家

 安芸市では、三菱グループを創業した岩崎家の4代のうち、3代が生まれた「岩崎彌太郎生家」が、当時のままの姿で保存されている。

 大河ドラマ「龍馬伝」で表現された掘っ立て小屋と違ってずいぶん立派。少年期の彌太郎が日本列島のように岩を並べ、「日本列島は我が庭の内にあり」と言ったという庭も残されている。

 そのほか東部エリアには、国の天然記念物に指定されたシダの群生が非日常へいざなう「伊尾木洞」、世界ジオパークに認定された「室戸岬」に自生する亜熱帯植物のアコウの木や天狗岩、日本を代表する鍾乳洞「龍河洞」など見どころがいっぱいだ。

岡山から鉄路で四国を満喫

 鉄路で本州から四国へ向かう際、玄関口となるのが岡山駅だ。途中、岡山県倉敷市と香川県坂出市を結ぶ瀬戸大橋を渡り、四国各県へとつながっていく。

 昨年9月、その四国ルートに新型車両が導入された。JR四国の2700系特急形気動車がそれで、現在は岡山―高知駅間を走る特急「南風」の一部に使われている。

 Wi-Fi無料サービスに全席コンセント付き、トイレはウォシュレット完備と至れり尽くせり。「制御付き自然振り子システム」の採用でカーブ走行時の横揺れも従来型の2000系気動車に比べて軽減された。

 瀬戸大橋を通過する際に一望できる瀬戸内海の島々、吉野川の流れが削った大歩危小歩危(おおぼけこぼけ)の自然の彫刻を楽しみながら、高知東部エリアに足を延ばすのに最適だ。

 後免―奈半利駅を結ぶ土佐くろしお鉄道では、オープンデッキ型観光列車「しんたろう号」「やたろう号」が楽しい。JRの土讃線に乗り入れている区間(高知―後免駅間)などでは使用できないが、普通列車の運賃で予約なしで乗車できる。高架を走る列車で南国の風を感じながら眺める太平洋は格別だ。

 (取材・文=二口隆光/日刊ゲンダイ)

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