肺がん末期の80代男性「いつ最期を迎えてもおかしくない…どうしても今日、家に帰りたい」
当院では、「できません」と言わない医療を信条に、どのような患者さんでも断ることなく、訪問診療を行っています。深夜に緊急の往診へ向かうこともありますし、すでに状態が厳しい患者さんであっても、ご自宅で療養できるよう、関係機関と迅速に連携を取ることも珍しくありません。
ある日の夕暮れ、日中の定期診療が終わり、スタッフが帰宅の準備をしていた時のことです。懇意にしている病院から、一本の電話がかかってきました。
「今にも息を引き取ってもおかしくない状態なのですが、どうしても自宅に帰りたいという患者さんがいまして……」
お話によると、80代の男性で、肺がんの終末期。病院での治療を受けながらも、「今日はどうしても家に帰りたい」と強く希望されたそうです。血圧はすでに70を下回り、病院側が「このまま病院に残った方が安心では」と提案しても、患者さんも奥さまも「今夜は自宅で過ごしたい」と譲りませんでした。
「ご自宅に帰れば、歩くこともできるし、ごはんも食べられるとおっしゃるので、急ぎ介護タクシーを手配しました」