「動的平衡は利他に通じる」福岡伸一著
「動的平衡は利他に通じる」福岡伸一著
物質(非生命体)は、宇宙の大原則であるエントロピー(乱雑さ)増大の法則に身を任せざるを得ず、秩序あるものは無秩序になる方向にしか変化しない。ところが、生命だけはこの法則にあらがい、形のないところに形を作ろうとする。
生命があらがうことができるのは、エントロピー増大の法則を先回りして、細胞内で休みなくタンパク質や構造体を分解しているからだと著者は説く。分解と合成という相反することを同時に行い、分解を先回りして行うこと、これを著者は「動的平衡」と名付けた。一方で生命は絶えず環境から物質を取り入れると同時に供給も行っている。動的平衡はこの利他性と密接な関係があるという。
そうした動的平衡の視点から世界を改めて見回すエッセー集。
(朝日新聞出版 1045円)