38.6度の高熱でも気軽に病院では受診できず…記者が体験

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 これからの寒さも厳しくなり、風邪をひく方は増えるだろう。しかし発熱をしても気軽には病院で受診できない時代になったようだ。 

 11月末のある日、悪寒が走り鼻水も出始めて37度の発熱。寝ていてもだるくて咳も止まらない。記者は喘息持ちなのでこじらせたくないと発症3日目には病院に行くことに決めた。午後に帰宅し、体温を測るとまさかの38.6度という高熱。早く病院で気管支炎の薬を処方してもらいたいと思ったものの、行くかどうか迷ってしまった。

■“受診控え“の誘惑

 通常、冬に高熱が出るとインフルエンザを疑うものだが、この御時世ではむしろ新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を疑わざるを得ない。もし陽性反応が出たらと考えてとゾッとしたのだ。

 風俗など周囲にバレると気まずい場所などには行っているわけでもないが、過去1週間程度を逐一報告すること自体が気持ちよくない。それ以上に今後2週間、自宅療養や入院にでもなれば、面談取材や打ち合わせ、懇談の予定がすべて飛んでしまう。それは家族や会社関係などの濃厚接触者にも及びかねない。自分の症状よりも関係者に迷惑が”感染”することを考えると気が重くなる。

 本来の「受診控え」は病院に行くと新型コロナウイルスに感染するという恐れから起きるものだが、記者のような思考で実際に受診控えをする人も少なくないと聞く。知人の会社では発熱しても病院で診断を受けないというのがデフォルト(既定値)だそうだ。

■38.6度で病院に行って断られる

 だが、病院に行かないで自然治癒を期待する選択もリスクが高い。結果的に軽い風邪ならばいいが、そうでなければ症状が悪化するかもしれないし、COVID-19を拡大させてしまうかもしれない。そこで腹を決め、特にかかりつけ医もいないので、自宅の最寄りの内科クリニックへと高熱でフラフラしながらたどりついた。

「風邪らしくて。さきほど検温したら38.6度出たので診ていただきたいのですが」と、病院の受付で申し伝えると、それを聞きつけたドクターが奥の診察室からあわてて飛び出してきた。

「うちはダメダメ。見てください、(病院の)入口は一つしかありませんから。〇〇病院とかの発熱外来に行ってください。15分で結果も出ますので」と、“アドバイス”を受けた。

 今冬は、発熱したらこれまでのように気軽に町の病院に行くのではなく「発熱外来」のある施設に行かなければならないらしい。そこで名前が出た〇〇病院を調べて電話をしたのだが、本日の予約は一杯ですと断られた。ああ早く咳を抑える薬を飲みたい。
 
■“秘密”の施設でPCR検査

 それならばと記者は別の行きつけの総合病院に電話をして事情を説明したところ、翌朝には受け入れられるとのこと。この病院のホームページで明記されていないが今冬に対応した発熱外来があるようだ。病院の担当者からは「××の角を曲がったところに××な施設があります。看板は出ていません。インターフォンを明日×時×分ちょうどに鳴らしてください」と言われた。まるでスパイ映画のようだが、この対応には理由がある。

 そもそも感染症指定医療機関ではない病院もコロナ患者を受け入れられる仕組みができたが、今冬からは「診療・検査医療機関」という制度が動き始めている。

 要件を満たして申請をした医療機関が都道府県により「診療・指定医療機関」の指定を受けると、発熱外来診療体制確保補助金(「令和2年度インフルエンザ流行期における発熱外来診療体制確保支援補助金」)という厚生労働省の国庫補助金を受けられるようになった。医療機関の診療体制によるが、発熱外来診療時間7時間、基準発熱患者数20人を上限に、まったく受診がなくとも補助金が指定医療機関に補償される。発熱外来のための設備投資をしたり、発熱患者専用の日や専用の時間を設定(空間的・時間的動線分離)して体制づくりをしても発熱患者が訪れなければ医療機関は開店休業になるだけ。補助金というセーフティネットを張ることで、季節性インフルエンザとCOVID-19の疑いのある患者を医療機関が受け入れる体制づくりを後押しする。

 さらに「診療・指定医療機関」であることを公表するか否かは指定医療機関の判断にゆだねられており、東京都も一般に公表していない。記者が受診した病院が発熱外来施設を公表していなかったのもそういうことだ。無症状者の検査を回避するなど理由があってのことだろうから、本記事での暴露は差し控える。強調したいのは、かかりつけ医がいない方は、熱を出すとこれまでのように病院に駆け込んで診療を受けるという形にはならなくなってきているということだ。

■陽性反応が出ても仕方がない

 そして翌朝。自宅で体温を測ると35.8度に下がっていた。ほぼ平熱だ。どうやらCOVID-19ではないらしい。とはいえ、発熱外来を予約しているし、不安は残る。そこで、それらしい施設を探し出して時間5分前に入口の前に立っていた。すると防護ガウンを着た看護師にその冷凍倉庫のような施設に招き入れられた。かなり広い空間に更衣室のような仕切り部屋が10ほどあり、患者同士を接触させないような設計にしている。設備の備品は新しく、運用開始はごくごく最近なのだろう。

 PCR検査の流れは、健康保険証を渡す、問診表を記入する、長い綿棒でグリグリと鼻腔ぬぐい液(鼻水)を採取される、医師の問診を受ける。問診では症状や行動履歴を聞かれた。検査代は保険適用を受けて1900円。インフルエンザ感染も検査してもらいたかったのだが、「今冬、東京都では(インフルエンザ患者は)4人しか出ていない」(11月1日現在の報告者数)ということで検査はされなかった。あとは帰宅して電話がかかってくるのを待つことになった。

 陽性反応だと早く電話がかかってくるとの噂もあるが、午後いちに病院から電話。ドキドキしながら病院の担当者と話すと「陰性でした」と伝えらえられる。ようやくホッとした。しかし、病院で受診はできず、風邪だったのか、胃腸炎か何かだったのかいまだによくわからない。

 受診控えや、医師の診断を受けてもPCR検査を拒否することなどが問題になりつつあるが、ここまで感染が広がっていれば陽性反応が出るのは誰でもあり得ること。むしろ、診断を受けない隠れ陽性者が行動変容をせずに新型コロナウイルスを拡散させることのほうが問題だ。とはいえ、検査と結果を受け入れられる空気づくりがいまの日本社会にはもっと必要だろう。

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