終活するも跡継ぎはいない…お墓はサブスク、墓石もレンタルでいいかしら?
終活・寺院紹介サービス「徳禅庵」のアンケートによると、親世代の約9割が「お墓のことで子供や孫に負担をかけたくない」と思っている。その理由として大きいのが「金銭面」と物理的な「距離」だ。年末年始の帰省でじっくり親子で話し合ってみたい。
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好きな自動車を毎月定額料金を支払って乗り放題。あるいは、月会費を納めれば全国どの施設でも利用可能のスポーツジムもある。今や大人気のサブスクリプション(定額使い放題)。そのサブスクに「お墓」まで加わっている。提携寺院に何度でも改葬できたり、途中解約も自由。お墓を賃貸住居のように利用する時代がやって来た。将来的にUターンの予定がない人は現在居住する場所の近くに改葬する方法もあるが、転勤が頻繁だったり、将来どこに住むのか決まっていない人もいる。そんな悩みを聞いて徳禅庵では、「子や孫の都合に合わせてお墓(納骨堂)が引っ越しできるサービスがあったら……」と考えたという。
■何度でも改葬できる「転葬サービス」
「お墓の承継者の転勤などに合わせてお墓も一緒に引っ越しする『転葬サービス』という考え方です。一度会員になると、全国の提携寺院に何度でもお墓を移せます。さっそく京都市の『祇園堂』と神戸市の『善立寺』の納骨堂2カ所でサービスをスタートさせていますが、2022年以降は東京など首都圏にも提携寺院を拡大していく予定です」(徳禅庵の担当者)
利用料金は東京23区内が198万円(税込み)、それ以外が132万円(同)となっている。一般的な納骨堂の平均価格91万円(鎌倉新書調べ)に比べ割高になるが、改葬を2度、3度繰り返すことを考えるとメリットは大きい。実は、このお墓のサブスクとも言うべきサービスは別の企業でも始まっている。
月額3980円で全国170カ寺に納骨
「のうこつぼ」は月額3980円(税込み)で、東京・杉並区の清徳寺など全国170カ寺が利用可能。初期費用や、管理費などが月額料金に含まれ、賃貸マンションを借りるといったイメージだ。利用者の都合でいつでも自由に引っ越しができるし、一般墓を購入するまでの「つなぎ」のお墓としても重宝する。また、跡取りのいない夫婦などは最終的に合葬墓への永代供養も可能だ。
さらに、初期費用27万5000円(税込み)+月額3300円(同)で利用できる「偲墓」(運営・佛英堂)というサブスク墓もある。いわゆる、入居金のある有料老人ホームのようなイメージと言っていい。解約する場合は永代供養墓に移すか、遺骨を引き取るかも選択できる。
ところで、一口にお墓を建てると言っても、土地使用権(永代使用権)や管理料、墓石代などがかかる。
一般墓の平均価格は169万円(鎌倉新書調べ)で、都内であればこの数倍。都立霊園もそうで、府中市にある「多磨霊園」の一般埋蔵区画を購入するとなると、永代使用権だけで約154万から525万円(1.75~5.95平方メートル)だ。これを子から孫、またその孫へと代々受け継ぐのなら分かるが、そうでなければ購入をためらってしまうのも分かる。
■有期限墓地ならば永代使用よりお得
一方、承継者の問題で「墓じまい」が確定しているようなケースでも、お墓を持ちたいと希望する人もいる。
このような人たちのために、5年や10年といった期限を設けて貸し出す「レンタル墓」(有期限墓地)というサービスもある。亡き夫を弔うため一代限りのお墓が欲しい、あるいは姑と同じ墓に入りたくないといったさまざまな場合で活躍し、費用は使用年数に応じて変わってくる。定期借地権付きマンションのようなものだ。期限が過ぎれば返却するため、永代使用に比べてやはり安いのが魅力だ。
そして墓石もレンタルがある。すべて受注製造の新品墓石を貸し出す「お墓レンタス」(石屋千鳥)では、200種類以上のデザインから墓石を選べ、月額レンタル料は6700円(字彫り、設置工事、耐震施工込み)から。レンタル期間は3年、5年、10年があり、期間を過ぎても延長でき、買い取りも可能だ。
これに加え、墓地使用権と墓石を一緒にレンタルすることもできる。宮城県仙台市の「みやぎ霊園」の有期限墓地「夫婦百年の墓」は、10年から100年まで10年単位で墓石ごとお墓が借りられる。気になる使用料は、管理料も含めて10年で53万7500円~100年146万円(税込み、墓誌彫刻文字料は別途)。やはり一括購入するより安くなる。
とはいえ、先祖代々のお墓を承継してきた者(親)、これから引き継ぐ者(子)にとって、「〇〇家」と刻印されたお墓こそが正統という思いもある。地方によってはお墓に刻まれた故人の「院号」などに誇りを持っているところもある。
サブスク墓やレンタル墓は罰当たりにならないだろうか? 浄土真宗本願寺派僧侶で作家の向谷匡史氏は「サブスクだろうとレンタルだろうと構いません」と言ってこう続ける。
「故人を弔う本質は、そばにいるか、遠くにいるかではありません。仏様を思い出し、手を合わせることが大切なのです。墓参りができなくても罰当たりではないし、ちょっとでも『申し訳ないな……』と思う気持ちこそが大事なのです。お墓や供養はある意味、生きている人のためにあるものです。納骨堂に抵抗があるという人もいますが、納骨堂は50年も前に登場しています。いずれはバーチャルな仮想墓も一般的になると思います」
正月に帰省するなら、親子で話し合う絶好の機会だ。親は子供に負担をかけたくないと思い、子も親を気遣って終活の話は振りにくい。こうしたいろんなお墓事情があることをトピックとして取り上げ、会話のきっかけにするのもいい。