大手の旧電力vs新電力…一体どっちがお得なの? 値上がりの今こそ考えてみた

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 電気料金が上がり続けている。化石燃料由来の燃料費調整単価への補助金が出ているものの、7月1日からは東京電力が電気料金の値上げを予定するなど、値上げの動きはおさまらない。この機会にほかの電力会社に乗り換えたほうがいいのだろうか。

■電気料金の仕組み

 電気代が高い安いというが、そのためには料金の仕組みについて少々知っておきたい。

 電力料金は、

①基本料金
②使用量に比例する単価
③再生可能エネルギー発電促進賦課金


 の合計で成り立っている(図1)。

 ③はどの小売会社も一律に徴収するため、価格競争の対象は①と②の部分になる。

 つまり①の基本料金が無料かどうか、②の使用量と掛け算になる1時間当たり電力消費量(キロワット時)の単価。これらをめぐり激しい競争が起きている。東電HDが2018年に設立した新電力「あしたでんき」などは6月30日にサービス停止を発表している。

 そんな電力事業者は2つに分類できる。東京電力系などの旧一般電力事業者と、16年の電力小売全面自由化によって一般家庭向けに販売を始めた「新電力」の事業者だ。

 新電力の事業者は発電はせず、大手電力や地域発電所などから電力を購入して大手の送電を利用して家庭に供給販売している。そのため新電力の会社ごとに電力の質に差が生じることはまず起きない。しかし、大手発電会社が値上げをすればその電気を仕入れている新電力もあおりを受ける。

 ①の基本料金は大手と一部の新電力は段階的に設定している。東京電力スタンダードSというプランで40Aならば1180.96円だ。一方、多くの新電力は0円を売りにしている。

 基本料金0円は、別荘暮らしや出張などで長期不在をしたり不在がちな家庭には最適だろう。

 ②については、大手は使用量(キロワット時)が増えると単価も上がる仕組みにしているが、多くの新電力は固定制や市場連動型にして対抗している。

 市場連動型(卸電力取引所)を売りにする新電力の中には、最安値が1キロワット時で1円以下と極端な数字をあげるところもあるが、最高では70円以上になる場合も想定されていたりする。常に価格が変動するよりも、過去のデータを基に昼価格と夜価格などを設定した新電力のほうが安心感を覚える。

価格的には大差ないようだけど

 では、どの電力会社を選べばいいのか。「親指でんき」のように細かく複数の料金プランを用意する企業もある。インターネットにはエネチェンジなどの料金比較サイトもあり、電力料金もシミュレーションできるが、新電力の価格競争は似たり寄ったりともいえる。なぜこのような状況なのか。

 新電力の利用者であり、再生可能エネルギーや都市計画に詳しい田中信一郎・千葉商科大学准教授は次のように話す。

「現状では、特定の電力会社だけが大幅に安くなるということはないので、新電力が価格で違いを出すことは難しいです。なぜなら大手電力会社の経営や電力料金を守るようなシステムになっているからです。大手電力は経営努力をしないまま、それが新電力の価格に上乗せされるようになっています。大手は競争はせず新電力は完全な競争状態なんです」

 今年1月には関西電力や九州電力などの社員が送配電の子会社を通じて新電力の顧客情報などを不正に閲覧して営業活動に利用していたことが大問題になった。新電力は大手の送配電子会社を使わざるを得ないシステムが悪用されたのだ。いまだに新電力が不利な立場であり、その結果、消費者が高い電気代を払わされているといえるようだ。

電力会社はどう選ぶ?

 ただ、料金以外にも契約先を選ぶ点はある。

 一つはポイントやサービス。楽天は楽天ポイント、auはpontaポイントがたまったり、スマホの通信費が割引になるキャリアーも。

 エコという視点もある。再生可能エネルギーを実質的に100%販売していることを特徴にしている電力会社は少なくない。ソフトバンクでんき(自然でんき)やエコ系の新電力だ。海外でもアップルなどは、工場やオフィスで使う電力は100%グリーン電力にしている。また、グリーンピープルズパワー社は、燃料費調整単価には補助金が出るにもかかわらず化石燃料を推進するからと電力料金に組み込んでいない企業姿勢が鮮明だ。

 このように中長期的な視点で電力会社を選ぶことは大事だと田中氏は指摘するが、ではどのような電力会社がおすすめか。

「一つは不正なことをする会社からは買わないということです。これまで通り、大手電力から電気を買い続けることは、不正をした大手電力会社を認めることにつながるからです。それでは、どのような新電力と契約したらいいのか。私がおすすめするのはパワーシフトという新電力の紹介サイト。このサイトは自然エネルギーや環境問題に前向きな電力会社を紹介しています。同サイトに出ている新電力の特徴は大手電力会社にモノ申して変化を起こそうとしていることです。その点に付加価値を感じるかどうかは人それぞれでしょうが。電気料金にこだわる人は、サイト内の電力会社の料金を比較して選べばよいのでは」

 サイトには自治体系事業者、地域系事業者などのカテゴリーもある。ふるさと納税感覚で投資してみるのもいいかもしれない。

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