“適度な寒冷刺激”のメリットが絶大なワケ…脂肪が燃えて感染症予防になる「コールド・トレーニング」

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白血球が増え免疫力が上がる「コールド・トレーニング」

「コールド・トレーニング」が起こす驚くべき効果は、血管の鍛錬と褐色脂肪への刺激だけではない。ウイルスを退治してくれる白血球の産生にまで及ぶ。

 人体には5リットルから6リットルの血液が循環している。血液は、その55パーセントが血漿(けっしょう)で45パーセントが血球だ。

 血漿はおもに水で、ミネラルや糖質脂質、ホルモン、100種類を超えるさまざまなタンパク質を含んでいる。

 血球には赤血球、血小板、白血球の3種類があり、血球のほとんどを占める赤血球は肺で酸素を吸収し臓器に運ぶ役割を担う。血液が赤いのは赤血球細胞に含まれるヘモグロビンによるもので、これは酸素と結合する成分だ。血小板は出血を止め、かさぶたをつくることで傷の回復を助けてくれる。

 白血球は、さまざまな細胞の集合名だ。赤血球よりも大きく数は少ないが、細菌やウイルス、寄生虫、菌類、酵母、その他の異物による感染から身を守ってくれている。もし感染症にかかったら、異物と戦うために身体が白血球を生成するので、白血球の数は増える。

 オランダ血栓症基金による調査では、毎日冷水シャワーを浴びる人の血液中にも白血球が多いという。この白血球の増加について、研究者たちは「免疫機構が活性化することで白血球がさらに生成されるからだ」と説明している。

 少々専門的な話が続いたが、褐色脂肪と白色脂肪、赤血球と白血球について知ることには大きな利点がある。低温が身体に何をもたらすかを把握するだけで、寒さに耐える訓練を始めるための強い気持ちが養われるのだ。

「コールド・トレーニング」は、太りすぎにも菌類やウイルスによる感染症にも、数々の体調不良にだって効く──さらに、ストレスや運動不足で収縮し血流を悪化させてしまった血管を、開放することまでできる。そのしくみを具体的に知らなかったとしても、問題ない。ヴィム・ホフ・メソッドに則り冷水シャワーを浴びさえすれば、身体に何かが起こっていることに気づけるはずだ。

▽ヴィム・ホフ(Wim Hof) 1959年、オランダ生まれ。極寒に耐えられる能力を活かし、現在20もの世界記録(北極圏でのハーフマラソンのタイムや、氷の詰まった浴槽に居続けられる時間など)を保持しており、その様子がBBCにも取り上げられTEDで語られた。こうした偉業のほか、人体への効果が科学的に証明されたヴィム・ホフ・メソッドの考案者として世界中の何万もの人々に感銘を与え、「呼吸エクササイズ」と「コールド・トレーニング」の実践を通して、彼らが失いかけていた生命力を取り戻させてきた。共著書に『アイスマンになる(Becoming the Iceman)』がある。

▽コエン・デ=ヨング(Koen De Jong) アムステルダム在住。呼吸とランニングに関する6冊の著書があり『マラソン革命(Marathon Revolution)』はオランダでベストセラーになった。ヴィパッサナー瞑想の実践者でもある。ヴィム・ホフに出会って以来、寒中水泳を楽しむようになった。愛読書はミヒャエル・エンデ『モモ』。

▽小川彩子(おがわ・あやこ) 学習院大学大学院人文科学研究科哲学専攻博士後期課程単位取得退学。翻訳者。おもな訳書に『ハーバード集中力革命』(サンマーク出版)、『メジャーリーグの書かれざるルール』(共訳、朝日新聞出版)、『一流のプロは「感情脳」で決断する』(共訳、アスペクト)、『世界の名画 1000の偉業』(共訳、二玄社)、『結婚したい。でも、愛だけじゃ結婚できない』(オープンナレッジ)、『電子メールプロトコル詳説』(ピアソン・エデュケーション)などがある。そのほか技術文書の翻訳や翻訳書の編集などに携わっている。

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