著者のコラム一覧
大竹聡ライター

1963年、東京都生まれ。早稲田大学第二文学部卒業後、出版社、広告代理店、編集プロダクションなどを経てフリーに。2002年には仲間と共にミニコミ誌「酒とつまみ」を創刊した。主な著書に「酒呑まれ」「ずぶ六の四季」「レモンサワー」「五〇年酒場へ行こう」「最高の日本酒」「多摩川飲み下り」「酒場とコロナ」など。酒、酒場にまつわるエッセイ、レポート、小説などを執筆。月刊誌「あまから手帖」にて関西のバーについてのエッセイ「クロージング・タイム」を、マネーポストWEBにて「大竹聡の昼酒御免!」を連載中。

(34)箱根湯本で蕎麦屋酒

公開日: 更新日:

 さて、腹が減った。喉も渇いた。湯本へと下っていくと、川岸に、風情たっぷりの蕎麦屋があった。迷わず、入る。

 ビールに板わさが置かれたテーブルが、実いい眺めだ。さっそくグラスを傾ければビールが沁みる。店の入口に茂っていた木の葉の匂いも蘇るようである。更新というのか蘇生というのか、それとも生まれ変わりか。天然の温泉で蘇った舌に、かまぼこがうまい。そして、蕎麦だ。

 とろろ蕎麦。蕎麦は海苔をのっけた、ざる蕎麦だ。このとろろ、希少な自然薯だという。

 うまいねえ。実直、素朴、田舎の味。そういう連想が浮かぶのだが、淡く香って味覚と嗅覚をくすぐる上質の蕎麦と合わせたとき、この実直さがいい仕事をしてくれた。

 森を歩き、湯に浸かり、うまい酒と蕎麦を味わった。今日は実にスマートな散歩酒になったじゃないか。さあ、もう帰ろう。
いや、帰りたくない。「おうちに着くまでが遠足ですよ」という戒めも聞こえてくるが、このままでは帰れない。とことん飲みたい気分になっている……。

 箱根湯本の駅へ向かいながら、私はひとり、人知れず悶絶していた。

【連載】大竹聡 大酒の一滴

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    佐々木朗希の選手会脱退に「情けないし、寂しい」 球界に広がった“第2の朗希”への危機感

  2. 2

    (1)阿部監督の暴行事件は巨人にとって“渡りに船”だったか…異様に早い「解任判断」の裏側

  3. 3

    ドジャース大谷6年連続オールスタースタメンに暗雲…建国250周年の地元票が生む“フィリーズ包囲網”

  4. 4

    中傷動画疑惑に「ナメプ」連発の高市首相に大打撃! 共同通信の作成者証言報道を皮切りにメディア総攻撃開始

  5. 5

    「ペチュニア」と「キンギョソウ」が見頃を迎えた花と緑のテーマパーク「東京ドイツ村」入場券を5組10人にプレゼント

  1. 6

    セクシー女優・藤咲まいが「台湾売春」で逮捕 高額ギャラの裏側にある“ホスト沼”の存在

  2. 7

    「ベンチ裏で泣いた」佐々木朗希に囁かれたメジャー適応力への不安…野茂英雄との決定的な違い

  3. 8

    東京都内の選挙で自民また手痛い負け…「リベラル一掃を」と鼻息荒かった杉並区長選も暗い先行き

  4. 9

    佐々木朗希がゴネた末の契約合意 この時すでに米挑戦は“既定路線”になっていた

  5. 10

    高市首相の閉鎖ブログに残された「不都合な真実」…国会で大見得《過去に週刊誌を訴えた》は虚偽なのか?