あの国営放送が“プーチン戦争”批判を展開!ロシアでいま起こっていること
いよいよロシア国内で表立った造反の動きが出てきた──。ロシア軍が苦戦し、ウクライナ侵攻の行く末が見通せないこともあって、有力者や政権内部からの批判を、国営放送が公然と放送し始めている。もう誰もプーチン大統領についていけないということなのか。今後、国民からの支持も失いかねない。
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「全世界がロシアと敵対している」「状況はこれから悪化する」
16日、国営放送「ロシア1」の番組内で淡々とこう話したのは、ロシア軍退役大佐で軍事アナリストのミハイル・ホダレノク氏だ。
■プロパガンダを真っ向批判
さらに、「『情報の鎮静剤』は飲まないようにしよう」「ウクライナ軍の士気や心理の崩壊を伝える情報が流されることがあるからだ」「そのどれひとつとして現実に即していない」と、ロシア政府によるプロパガンダまで批判したのだ。
「特別軍事作戦」を巡る討論番組で飛び出した異例の発言に、他の出演者はただただ硬い表情を浮かべ、沈黙するだけだった。
現状を苦々しく感じているのは、ホダレノク退役大佐だけではない。この放送の前日、同じ国営放送でアナトリー・アントノフ駐米大使も、作戦をネガティブに捉える有力者の声を紹介していた。アントノフ大使は、政府内の有力者の一部が侵攻をやめようとしていることを示唆。ある人物は、軍を撤退させ「悔い改めたい」と考えていると話した。
ロシアが国際社会から孤立
あのロシアで戦争批判が国営放送で公然と流されるのは異例のことだ。3月中旬には、やはり国営放送のニュース番組で女性スタッフが「戦争反対」と書かれたボードを掲示。あの時、女性は拘束されたが、なぜか今回はスルッと放送されている。筑波大名誉教授の中村逸郎氏(ロシア政治)がこう言う。
「女性スタッフが拘束された3月中旬と現在では、全く状況が違っています。戦況の悪化はもちろんですが、ロシア自体が国際社会から完全に孤立してしまっている。“仲間”のはずの旧ソ連国までがロシアから距離を置いています。現状を嘆くホダレノク退役大佐は、『プロパガンダでなく現実を見ろ』『もう戦争は続けられない』というメッセージを発信したかったのでしょう。ホダレノク退役大佐は軍人で、アントノフ大使は外務省所属。少なくとも軍と外務省がプーチン離れを起こし始めているということ。そこに、メディアまで追随し始めた格好です。国営放送は多くの国民が見ています。今後、現場の兵士の士気に加え、国民感情にも多大な影響が出てくるでしょう」
プロパガンダが通用しなくなれば、ロシア国民は一気に目を覚ます可能性がある。プーチン大統領はどんどん追い詰められている。