潰れそうになっても潰れない…100年続く中小企業の仕組み 創業200年以上の企業の65%は日本に
人の寿命は長くても110年だが、法人(企業)の寿命は長い。帝国データバンクの調査によると創業100年以上の老舗企業は全国に4万社。そのうち上場企業は500社。また世界にある創業200年以上の企業の65%が日本にあるとされる。現場を歩いて調べている「100年企業研究会」の代表理事で特定社会保険労務士の日比野大輔さんに話を聞いた。
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不動産を多く所有するなど盤石な経済的基盤のため歴史の長い大企業は少なくないが、そんな基盤を持たずに数百年続いている中小企業が存在する。中小零細企業の寿命は事業承継が起きる35年説が一般的だといわれる中、なぜ長寿なのか。
「100年企業にはいろいろなタイプがあります。世界最古の企業である金剛組(578年創業、大阪)は四天王寺など神社仏閣とつながっている。京都の造園業も寺とつながりがあり、寺がある限り企業も続くわけです。一方で卸売り系の企業などは事業をどんどん変えていく。社員やその家族の生活を守るためにです。ベンチャー企業が変化についていけない社員を切るのとは真逆のスタンスです。
100年企業とは、一つ屋根の下、喜びや悲しみをともにするファミリー的な性質を持ったコミュニティーです。江戸時代に完成されていった日本人の道徳観や知恵が凝縮された『潰れない仕組み』を持った組織です。なぜ潰れないのかといえば、会社の存在が社員にとって、生活や人生そのものだから。
故郷の小学校が廃校になりそうと聞けば、守ろうとします。潰れそうになったら会社を救おうとするステークホルダーが、継続的に育まれる仕組みを持っているんです。だから潰れそうになるけど、潰れないんです」(日比野さん=以下同)
新潟県湯沢町の旅館「高半」も従業員20人ながら940年以上続いている。
「高半の女将は先代から言われたそうです。『従業員に残ったご飯を食べさせるな。新しく炊いたご飯を食べてもらいなさい』って。司馬遼太郎が天皇のことを、生身の心と体を持ちながら、自らの存在を民を幸せにする法(機能)と化すことが宿命づけられた存在と分析しました。100年企業の経営者にもそれと近い感覚が育まれている。傲慢な経営者でもなんだかんだいって社員のことは愛しています。使用者と労働者ではなく、家族や親戚のように感じています」
調べた100年企業は世襲が大部分だった。幼いころから会社に出入りし、社員に可愛がられてきた社長が多い。昨今、日本の職場には子どもの姿は見えない。戦前は、工場法が適用された大規模な工場以外の職場には、子どもの姿があった。それが1947年の労働基準法施行で、日本の職場から子どもが消えていった。
最近の中小企業の経営者は我が子を塾に通わせるが、職場からは遠ざける。有名大学に進学させ、子どもはお洒落な企業でスマートに働くのが良いという価値観を抱いていく。そうした2世は、いざ家業を継ぐと自らの価値観とのギャップに苦しむ。自らの価値観でいけば、家業は「負け組」と感じてしまうからだ。そして、親と既存の社員との間に軋轢が生まれるという。