田中康夫氏に聞く 「33年後のなんクリ」で描いた日本の今

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 日刊ゲンダイ本紙でも長らくコラムを連載していただいた作家の田中康夫さん(58)は、常に、「次の行動」が気になる人だ。鮮烈なデビュー作、「なんとなく、クリスタル」がもたらす、「なんとなく軽い」イメージが強い人もいるかもしれないが、実像は違う。「なんクリ」の作者はその後、長野県知事になり、脱ダム宣言をし、参院、衆院の議員を務め、新党も作った。その政治活動の根幹にあったのは、日本の行政の常識、既得権への挑戦であり、効率化がすべてという新自由主義に対する懐疑だった。その作者がつい最近書いた小説が「なんクリ」の続編、「33年後のなんとなく、クリスタル」だ。33年間で日本はどう変わり、主人公たちはどこへ行くのか。彼らのセリフを通して語られる日本の今後が興味深い。

■あり得ない大本営発表がまかり通っている

――33年前の「なんとなく、クリスタル」を読んでいない読者もいるでしょうから、最初に説明させてください。「なんクリ」のヒロイン、由利は女子大生であり、モデル。1980年代の繁栄を一身に受けていたような主人公でした。物語には442もの注釈があり、NHKを〈大日本帝国(大和、日本交通、帝都、国際)以外のタクシーの客待ちはお断りする、開かれた国営放送局〉と書くなど、非常に皮肉が効いていました。その巻末には「人口問題審議会『出生率動向に関する特別委員会報告』」と「厚生白書」がさりげなく出てくる。出生率の低下と人口減少率、老年人口比率の上昇、厚生年金保険料のアップの政府見通しが記されていて、この辺が表層的な小説に見えて、実は非常に暗示的でした。作家のなかにし礼さんは田中さんが当時から〈現在の貧困日本を読み解いていた〉と書いています。それだけに、今度書かれた「33年後」の中で、登場人物が語ることも暗示的で興味深かった。50歳になった由利ら「なんクリ」の登場人物たちが、さまざまな日本の「おかしさ」を語るわけです。なかにしさんは「現代の黙示録」と評していますね。

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