コロナ禍だから響く「田中角栄の7金言」元秘書が明かす
2020年はコロナに直撃された一年だった。一体、このコロナ禍はいつ終わるのか。出口が全く見えない。国が災難に見舞われ、国民が不安を強めている時こそ、リーダーの力量が試される。もし、田中角栄が生きていたら、国民に何を訴え、何を考え、どんな行動を起こしていたのだろうか――。角栄の金言を振り返るとともに、秘書を23年間務めた朝賀昭氏に話を聞いた。
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「子供が10人いるから羊羹(ようかん)を均等に切るってのは共産主義。自由主義は別だよ。羊羹をチョンチョンと切ってね。一番年少の子にでっかい羊羹をやるんだ」――。オヤジさんがよく言っていたこの言葉の意味は、明日食うのに困っている人にこそ手を差し伸べるべきだ、ということです。
コロナ禍では、非正規や女性など、弱い立場の人たちほど苦しみ、命を絶つ傾向が強いようです。「自分だけ置いていかれているんじゃないか」「もう生きていても楽しいことはない」といった絶望感と不安感にさいなまれてしまうのでしょう。
オヤジさんなら、一番困っている人に一番手厚く予算を使うでしょう。「国難の時は、国はなんぼ借金をしてもいい」っていう発想に立ち、気が遠くなるような借金をしたのではないか。借金は稼げば返せる。しかし命は一度失えば人の人生が終わってしまいます。オヤジさんなら「でっかい羊羹」をいち早く弱い立場の人に配ったはず。オヤジさんは、学歴もなく、本当に苦労した人でした。自分が苦労しているから人の痛みがよく分かる。苦労しない人は、「頭」では人の苦労が分かっても、実体験として湧かない。困っている人、弱っている人に手を差し伸べるのは、政治家として当たり前ですよね。
いま何より必要なのは、国民へのメッセージです。オヤジさんだったら「日本中が苦しいんだから、皆、心配しなくていい。焦らないでいこうや。今年と来年はもう休憩をしよう」「金のことは心配しなくていい。国がいっぱい借金するから」「働ける人は働きなさい」――というようなメッセージを送ると思います。まず、国民の不幸を取り除こうと考えたはずです。
だから、Go To トラベル事業を巡って、東京都の小池知事が「国の責任」などと繰り返していたことについても、うちのオヤジさんだったら大喧嘩になったでしょう。「都だ国だなんて、おまえは何を言っているんだ?」と。日本中が一つになって国民の恐怖とコロナ禍を克服しなきゃいけない時に、「お国がどうとか、都がどうとかバカなことを言っているんじゃない」「君は何のために政治をやっているんだ?」くらいのことを言うと思いますよ。