HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)を要チェック 正しい血糖対策で糖尿病から身を守る

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 11月14日はインスリンの発見者バンディング博士の誕生日にちなむ「世界糖尿病デー」。世界中に多くの患者が見られる糖尿病のことを考える日としてWHO(世界保健機関)とIDF(国際糖尿病連合)が制定した。

 日本でも約2000万人、国民のほぼ6人に1人が糖尿病もしくは高めの血糖値が心配される糖尿病予備軍とされる今、日頃から血糖値とどう向き合っていけばいいのかを取材してみた。

糖尿病は合併症が怖い

 糖尿病は血糖値が高い状態である「高血糖」が慢性的に続く病気。糖尿病が怖いといわれるのは、そうした状態が長く続くと血管が高血糖によって徐々に侵され、やがては心筋梗塞脳梗塞などといった重篤な合併症を誘発。最悪の場合には死に至ることも決して珍しくないからだ。

 しかも、厄介なことにそれだけの危険な病気でありながら「サイレントキラー」と呼ばれるように糖尿病は自覚症状がないままに静かに進行。ひとたび合併症が現れてしまうと元の状態に戻すことが非常に困難になってしまうのだ。

 そのため、高血糖におちいらないよう日頃から気をつけること、さらには、もし糖尿病と診断された場合には適切な治療を欠かさず受けることが何よりも重要になってくる。

日頃から意識しておきたい「HbA1c」

 血糖値を考える上でぜひとも覚えておきたいのが、「HbA1c」だ。

「これは赤血球中のヘモグロビンに結合したブドウ糖の割合を示す指標のことです。過去1~2カ月の平均的な血糖状態を反映しており、直前の食事に左右されにくく、ご自身の血糖の状況がわかります。実際、糖尿病関連の治療ガイドでも血糖対策の最重要指標と明記されています」

 というのは管理栄養士で料理研究家の麻生れいみ先生だ。

「HbA1c」は健康診断の診断結果を見れば簡単に知ることができる。5.5%以下なら基準範囲、6.5%以上は糖尿病の可能性が疑われる。その間の5.6%から6.4%は「要注意」だが、正常値範囲内のため、内科医だと警告しないケースが多い。まさに予備軍ともいえる状態で、そのまま何もせずに放置しておくと半数以上が糖尿病へと進行してしまう恐れがあるので、ただちに適切な食事・運動療法を開始することが大切だ。

高カロリー・高脂肪を避けた食事と適度な運動を心がける

「HbA1c」の数値を安定させ、上昇を抑えるためには高カロリー・高脂肪の食事を極力減らし、運動をしっかりとやって体重増加や肥満を防ぐことだ。

 というのは、糖尿病と大きく関わっている「インスリン」と呼ばれるホルモンがあり、これは体内の組織に糖を取り込ませることで血糖値を下げるという大事な働きをしている。ところが、体脂肪が増えるとインスリンの効き目が悪くなり、組織に糖が取り込まれにくくなってくる。

 すると、これが血糖値や「HbA1c」の上昇につながって糖尿病のリスクを高める大きな要因の一つとなってしまうというわけだ。さらに、高血糖状態であることもインスリンの効きを悪くし、「糖毒性」といって負のスパイラルから抜け出しにくくなるという。

 ちなみに、薬物療法としてインスリンそのものを外から補う注射という方法が一般的に用いられているのもそのためである。

おススメは食物繊維の多い食品、良質な脂肪、ヨーグルトなど

 ある研究によると「HbA1c」が1%低下すると、合併症の危険度が約4分の1に減少することが明らかにされている。だからこそ、一時的なケアではなく、食事や運動など毎日の生活習慣を改善し、0.1%でも「HbA1c」の数値を下げておくことが必要だろう。

 前出の麻生先生に血糖上昇を抑えたり、中期的に「HbA1c」を下げるのに役立つ食べ物や飲み物について聞いてみた。

「私が特におススメする食べ物は全粒穀物、野菜、豆類、果物など食物繊維の多い食品、脂の乗った魚類、ナッツ、オリーブ油など良質な脂肪。あとはヨーグルトもいいですね。米国の公的機関では、2型糖尿病リスクを軽減すると表明しました。ヨーグルトにはカルシウムやマグネシウム、ビタミンDなどの栄養素や乳清タンパクなどの栄養成分が含まれています。炭水化物の摂取前に乳清タンパクを摂取するとインスリンの分泌を刺激する消化管ホルモンであるGLP─1の分泌が刺激され、食後の血糖値の上昇を抑えやすくなるという報告もあるんですよ」

血糖値の高い人も正常な人も今一度見直しを

 今年も長かった酷暑の夏がようやく終わり、これから秋、そして寒さの厳しい冬がやって来るが、この時期は特に注意が必要だと麻生先生は警鐘を鳴らす。冬は他の季節に比べて血糖がやや高くなる傾向があるからだ。

「その理由は第一に寒さで外に出ることが少なくなり運動不足になるから。そして第二には、年末年始は高カロリー・高脂肪の食事を取る機会が増えるんですね。だからこそ、まずは自分の「HbA1c」の値をしっかり把握して、5.6%以上なら、いますぐ対策をはじめましょう」

 血糖対策はそんなに難しいことではない。日頃から意識していれば誰にでも簡単に実践できることばかりだ。

 それだけに「世界糖尿病デー」を機に自分の血糖値をもう一度見直し、高めの人はもちろん、今はまだ正常な人も糖尿病の魔の手には捕まらないように、しっかりと自己管理したいものである。

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