最大の課題は説得力のある「一つの改憲案」が提示できるのか
改憲に前向きな会派の国会議員が両院の3分の2以上に達し、少なくとも自民・維新・国民の3党が一致して提案すれば国民投票で過半数の承認を得られる可能性が出てきた。
しかし、次なるハードルがある。それは、3党or4党で合意できて、かつ、国民の過半数を納得させることのできる「一つの」改憲案を提示できるのか? である。
そこで、その材料を捜すために4党の改憲案を確認してみると、次のとおりである。
【自民】①自衛隊を憲法に明記する。②緊急事態条項を新設する。③参院選挙区の合区を解消する。④教育を充実させる。
【公明】①新しい理念(例:プライバシー)など改憲でしか解決できない課題があるか、検討する。②自衛隊違憲論を解消するために自衛隊を憲法に明記する意見があるが、多くの国民は自衛隊を違憲とは見ていない。③緊急事態に議員任期の延長を認めるべきか、議論を重ねる。
【維新】①教育の無償化。②統治機構改革(道州制)。③憲法裁判所の設置。④自衛隊を憲法に明記する。⑤緊急事態条項の制定。
【国民】①緊急事態条項の新設。②データ基本権(自己情報管理権)の新設。
このように、4党のスタンスは微妙に異なっている。しかも、公明は改憲には明らかに消極的である。しかし、前回の本欄で指摘したように、既に、自民・維新・国民が一致して提案できれば改憲が可能な政治状況にある。そして、3党に共通する改憲の課題は「緊急事態条項」の新設である。
緊急事態条項とは、戦争、天変地異、感染症の急拡大(パンデミック)といった非常時に、国家として迅速に対応するために憲法を一時停止する条項である。三権分立による合議と人権尊重による慎重な権力行使という、憲法の原則を一時停止して、首相に国家の全権を集中し、かつ、人権を停止して、国難を乗り切る手法である。
私自身は現行の非常事態法制を整備すれば十分だと思うが、まずは自民・維新・国民の3党で緊急事態条項について議論を詰めるべきである。
その過程を公開すれば、主権者国民(改憲の決定権者)の理解を深める一助にもなるはずだ。
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