「ポピュリズム」堂場瞬一著
「ポピュリズム」堂場瞬一著
時は20××年。日本は10年以上前に与党・新日本党により国会が廃止され、議員は20歳以上の国民からランダムに選ばれる直接民主制になっていた。2期8年の制約により、国民投票で決まる首相選が迫る中、新日本党はベテランの女性議員大曽根麻弥を選出。一方、野党第1党で、直接民主制に反対を唱える民自連はテレビのコメンテーターとして活躍する大学教授の尾島を、さらにお笑い芸人でユーチューバーの城山が無所属で立候補する。果たして三つ巴の選挙戦が始まった──。
社会派小説の旗手による最新刊は、直接民主制に移行して4年後の日本を描いた「デモクラシー」の続編的側面も持つ、首相選をめぐるスリリングな群像劇だ。主に、麻弥のイメージアップ戦略を担当する新日本党広報部の珠希、民自連の選挙局長で尾島の舌禍に手を焼く田代を中心に物語は進む。
メークを変え、猫好きを前面に押し出すなど“選挙映え”を意識した結果、麻弥の人気は高まるが、民自連と決裂した尾島は城山の選挙責任者に鞍替え、SNSでは城山推しが席巻する。SNSの描写など社会全体がポピュリズム化している様子は、まるで先日の参院選の結果を見るよう。「人気投票」と化した首相選を裏で糸を引く者、情報戦や駆け引きなどがリアル感満載だ。
(集英社 2145円)