猛暑に立ち向かう「気象の仕組みを知る本」特集
「天気予報はなぜ当たるようになったのか」長谷川直之著
先日、涼しいはずの北海道で40度に迫る暑さを記録し、驚いた人も多いだろう。近年、世界は異常気象の真っただ中だが、とりわけ日本は地理的にも狙い撃ちされているという。そこで今週は気象の仕組みがわかる本をご紹介。涼しい部屋で豪雨や猛暑の原因を学んでみよう。
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「天気予報はなぜ当たるようになったのか」長谷川直之著
元気象庁長官が、天気予報の仕組みを解説するサイエンステキスト。
気象は、一般的な物理の法則によって変化。線状降水帯や偏西風蛇行のメカニズムなど、未解明のものもあるが、気象の法則をあらわす方程式を使えば未来の気象が計算できる。この今の天気予報の基盤となる「数値予報」の出発点となる初期値を作るのに必要なのが、世界中から集める気象観測データだ。地上の気圧や気温などは世界の2万を超える地点で、気球による上空の気象観測はおよそ1000地点で毎日決められた時間に行われているそうだ。
こうした天気予報の実際から、近年その役割が大きくなっている防災気象情報への取り組みや、地球温暖化による気候変動の予測など、天気予報の進化の舞台裏を明かす。
(集英社インターナショナル 1012円)
「異常気象の未来予測」立花義裕著
「異常気象の未来予測」立花義裕著
このところ日本は異常気象続きだ。雨が降れば豪雨、晴れれば猛暑のどちらかで気象が二極化している。しかも雨は降る場所にも異常が見られ、今まで雨の少なかった東北地方でも未曽有の豪雨が頻発。また、2024年には11月としては初の線状降水帯が長崎で発生した。
実は日本は、世界から見ても異常気象激増地帯。その理由は日本列島の地理的位置と偏西風蛇行、海面水温上昇だという。特に猛暑は、ブロッキング高気圧(取り残された時計回りの大気の渦)が延々と日本付近にたまるため、「観測史上もっとも暑い夏」が各地で更新されるのだ。
こうした地球温暖化の影響により今後、起こりうる事象を予測。コメの不作を筆頭にした食料問題、夏は猛暑と豪雨、交通機関がマヒするほどの豪雪、屋外スポーツは4月がベスト、生活時間を2時間前倒しになど、異常気象の中で変化する生活を解説、提案する。
(ポプラ社 1012円)
「すばらしい空の見つけかた」武田康男 写真・文
「すばらしい空の見つけかた」武田康男 写真・文
数十年にわたって「すばらしい空」の写真を撮影してきた著者による珠玉の写真41点と、それら「空の現象」の科学を解説したフォト読み物。
たとえば、五重の塔のように雲が重なる富士山の笠雲。撮影されたのは2023年12月で、前日に西高東低の冬型の気圧配置となり、一方で日本海側を中心に湿った空気と寒気が入っていた。冬型の気圧配置のとき富士山はよく晴れ、さらに冬のはじめの複雑な状況が加わり、五重の笠雲ができたのだろうと解説。
「都心の雷」と題された一枚は、2024年の夏、東京スカイツリーから撮影。雷がギザギザした形になりやすいのは、流れやすいところを探って進んでいるからだそうだ。「立山連峰と大きな虹」、見ると幸せになるといわれる「グリーンフラッシュ」「蜃気楼の朝日」など、驚きを覚えるような写真と、その背景となる科学とを一緒に楽しめる一冊だ。
(草思社 2200円)
「天気のからくり」坪木和久著
「天気のからくり」坪木和久著
日本では昔から「二百十日」という言葉が使われてきた。これは立春から数えて210日目、だいたい9月1日ごろに台風がたくさんやってくるので、稲作をする人に注意を促したのだという。
稲が台風が一番多いころに合わせて実りの時期を迎えるのは、稲が太陽のエネルギーを蓄えて十分実るまでの時間と、強い台風を発生させられるほどの熱を海がためるまでの時間がちょうど同じためである。台風は海洋の表層部に蓄えられた熱エネルギーを水蒸気という形で効率よく取り込み、空気を暖め、上昇気流を強め発達していくが、台風には発達の上限があり、風速が毎秒200メートルという台風は決して発生しないという。
台風の謎を解くためにジェット機で突入したり、夜明けと夕暮れが一緒に来る町を訪れるなど、気鋭の気象学者の発見に満ちた気象エッセー55話を掲載。
(新潮社 1815円)