小林節
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小林節慶応大名誉教授

1949年生まれ。都立新宿高を経て慶大法学部卒。法学博士、弁護士。米ハーバード大法科大学院の客員研究員などを経て慶大教授。現在は名誉教授。「朝まで生テレビ!」などに出演。憲法、英米法の論客として知られる。14年の安保関連法制の国会審議の際、衆院憲法調査査会で「集団的自衛権の行使は違憲」と発言し、その後の国民的な反対運動の象徴的存在となる。「白熱講義! 日本国憲法改正」など著書多数。新著は竹田恒泰氏との共著「憲法の真髄」(ベスト新著) 5月27日新刊発売「『人権』がわからない政治家たち」(日刊現代・講談社 1430円)

「改憲」に必要なのは国会内の3分の2と国民投票の過半数

公開日: 更新日:

 今回の参議院半数改選の結果、改憲に前向きな自民、公明(?)、維新、国民の4党が、改憲発議に必要な3分の2(166議席)を大きく超えて、177議席に達した。

 これで、改憲論議は着実に前進することになる。

 これまでは、改憲に反対する立民、共産、社民は、改憲について議論をすることすら拒否していたために、議論の場である憲法審査会が休眠状態であった。

 もちろん、立民や共産にはそれなりの理由はある。つまり、これまでの国会運営では、議論に応じてしまうと、自民党は一定時間を経過したら、「審議は済んだ」として数の力で可決して先へ進んでしまうので、少数野党としては、「審議に応じたら負け」だから応じなかったのである。

 しかし、民主主義とは、個人の多様性を前提にして、一定時間の議論を経て意見を整理した上で、決をとって前へ進み、後にまた同じ手続きで修正しながら前へ進み続ける制度である。

 だから、昨年の総選挙で維新が躍進した結果、衆院憲法審査会が正常化したように、今後は参院の審査会も正常化することだろう。

■「改憲」のハードル

 ところで、改憲には、国会の3分の2による発議に加えて、国民投票の「過半数」による承認というハードルもある。

 その点で、これまでの自公政権は、多数派に有利な選挙制度の効果として過半数の議席は得ていたが、全国集計で国民投票の過半数は得ていなかった。この点が、安倍政権以降、強気の改憲キャンペーンを展開してきた自民党が、野党の審議拒否を押し切れるのに押し切らずにきた理由だと思う。

 ところが、今回の参院選では、改憲志向の4党で6割以上、公明を除いても5割以上の得票率である。だから、これからしばらくは、改憲4党(少なくとも自・維・国の3党)で合意できる改正案が調整できたら、改憲国民投票が現実のものになる可能性が高い。

 だから、これからは野党は憲法審査会の審議拒否をすべきではない。出席して堂々と反対論の根拠を示すべきである。


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『人権』がわからない政治家たち」(日刊現代・講談社 1430円)

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