「改憲」に必要なのは国会内の3分の2と国民投票の過半数
今回の参議院半数改選の結果、改憲に前向きな自民、公明(?)、維新、国民の4党が、改憲発議に必要な3分の2(166議席)を大きく超えて、177議席に達した。
これで、改憲論議は着実に前進することになる。
これまでは、改憲に反対する立民、共産、社民は、改憲について議論をすることすら拒否していたために、議論の場である憲法審査会が休眠状態であった。
もちろん、立民や共産にはそれなりの理由はある。つまり、これまでの国会運営では、議論に応じてしまうと、自民党は一定時間を経過したら、「審議は済んだ」として数の力で可決して先へ進んでしまうので、少数野党としては、「審議に応じたら負け」だから応じなかったのである。
しかし、民主主義とは、個人の多様性を前提にして、一定時間の議論を経て意見を整理した上で、決をとって前へ進み、後にまた同じ手続きで修正しながら前へ進み続ける制度である。
だから、昨年の総選挙で維新が躍進した結果、衆院憲法審査会が正常化したように、今後は参院の審査会も正常化することだろう。
■「改憲」のハードル
ところで、改憲には、国会の3分の2による発議に加えて、国民投票の「過半数」による承認というハードルもある。
その点で、これまでの自公政権は、多数派に有利な選挙制度の効果として過半数の議席は得ていたが、全国集計で国民投票の過半数は得ていなかった。この点が、安倍政権以降、強気の改憲キャンペーンを展開してきた自民党が、野党の審議拒否を押し切れるのに押し切らずにきた理由だと思う。
ところが、今回の参院選では、改憲志向の4党で6割以上、公明を除いても5割以上の得票率である。だから、これからしばらくは、改憲4党(少なくとも自・維・国の3党)で合意できる改正案が調整できたら、改憲国民投票が現実のものになる可能性が高い。
だから、これからは野党は憲法審査会の審議拒否をすべきではない。出席して堂々と反対論の根拠を示すべきである。
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