前広島市長・秋葉忠利氏「これで核は使えなくなりましたね」となぜ首相は言えなかったのか

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秋葉忠利(前広島市長)

「核なき世界」をライフワークとする、被爆地が地元の岸田首相が議長を務めたG7広島サミット。内閣支持率は上昇し、共同通信の世論調査によると、岸田首相がサミットで「指導力を発揮した」との回答は62.3%に上る。一方、被爆者であるサーロー節子さんは「わざわざ広島まで来て、これだけの内容か」と批判。被爆者からは失望の声が上がっている。広島サミットは核廃絶に向け前進したのか、後退したのか──。広島市長を12年務めた秋葉忠利氏に聞いた。

  ◇   ◇   ◇

 ──G7サミットをどう評価されていますか。

 表面的にとらえて「成功」したと受け止める方が少なくありません。表に表れたことと裏側に意図されてきたこと、そして、被爆者の思いは実現したのかの3つに分けることが大事です。

■資料館を見た首脳の反応を知りたい

 ──原爆資料館視察の際、岸田首相自らG7首脳に被爆の実相を伝えることを求める署名を募りました。

 5月9日から10日程度で1万7000筆集まりました。資料館を視察した人は、ほぼ全て心を揺さぶられます。2016年に当時のオバマ米大統領が視察した時は、資料館の入り口に入り、すぐ出てきた。滞在時間はわずか10分だった。今回、G7首脳は岸田首相の案内で40分間視察し、約10分間は被爆者の小倉桂子さんの体験話にも耳を傾けました。

 ──実相は伝えられたのでしょうか。

 オバマ大統領の際の批判を受けた対応と思われ、表面的には実相を知ってもらうことが実行されたようには見えますが、実質的にどうだったか検証する必要があります。

 ──視察の中身は開示されていない。

 小倉さんとどんな話をして、首脳がどう反応したのか、知りたい。また、スナク英首相は三輪車やボロボロの服装を見て心が揺さぶられたと言っているので、それなりのものは見せたのでしょうが、だったらなぜ、資料館全体を見せないのか。本館に入っていない。40分あれば、駆け足でも全体は見られます。

 ──署名では、視察を終えた直後の首脳に対し、岸田首相が「核不使用」を念押しするよう求めました。

 首脳らは「核抑止論」の立場に立った政治家ですが、悲劇の実相を目の当たりにした直後、人間として心からの反応が出てくるはずです。リアルな政治家に戻る前に岸田首相から「これで核は使えなくなりましたね」と言われれば、どう感じるのか。さすがに「そうですね」とは言えないでしょうが、自分の心の中に葛藤が生じたとすれば、それは一生消えずに、これからの政治判断で岸田首相の一言が脳裏をよぎるかもしれない。核廃絶に向け、こういう積み重ねが大事なのです。この要望は実行してもらえませんでした。

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