コ本や(神楽坂)店主は東京芸大大学院出身アーティストで中原中也賞受賞の詩人
約110平方メートルの半分が書店、半分がシェアオフィス
神楽坂から江戸川橋へ向かう住宅密集地。昭和の建築っぽいビルの外に「コ」と「本や」の文字看板が離れて設置されていて、う~ん、アートだ。階段を上がる。2階に「コ本や」があった。
広いー! というのは、昔、7坪半ほどの「コ本や」に行ったことがあったから。
「祖父の厚意で一室を貸してもらって王子で、あと2人のメンバーと始めたのが2016年。池袋を経て、23年にここへ移転して来ました。今? メンバー10人ほどです」
と、店主の青柳菜摘さん(36)。東京芸大大学院で「先端芸術表現」を専攻した、メディアミックスのアーティストで、さらに! 23年に第28回中原中也賞を受賞した詩人なのだ──-と、入り口近くに受賞作「そだつのをやめる」が積まれていて知った。
壁に額装された手書きの詩が目にとまる。中原中也賞選考委員のカニエ・ナハさんの「コ本やが王子にあった頃」と「コ本やが池袋から引っ越して」。
「王子時代から来てくださってて。池袋の店の最後の日には店内で推敲しながら書いてくださいました」と。店の来歴が言葉になって壁に残っているのだ。
今は、約110平方メートルの半分が書店、半分がシェアオフィス。出版部(thoasa=トオアサ)も持ち、展覧会やトーク、読書会、上映会を開く芸術活動の拠点とのこと。「私など芸術から遠いのにアウェー感がないのはなぜ」「棚が整いすぎていないからよ」と自問自答。
推して知るべし、在庫の厚みを
美術、映画、演劇、文学、思想、建築、写真、詩歌、自然科学。たんまり並ぶ古本は「店に来る人たちから買い取ったもの」が多いそうで、例えば映画の棚なら「ゴダール」「クリント・イーストウッド」、あるいは「トリュフォー 最後のインタビュー」、文学の棚なら佐多稲子、常盤新平、小島信夫、須賀敦子の著作も。推して知るべし、在庫の厚みを、である。
「『美術手帖』の自分の生まれた年、月の号を探す人、結構いらっしゃいます(笑)」と青柳さん。
ほかに「版元から直接仕入れ」の新刊やアートブックあり、他店では見かけないアート系ZINEあり。
「少しずつ、こうなったらいいなと思っていたことがかなってきました」
この日、私は新刊の小南弘季著「東京の神社と氏子域」を購入した。
◆新宿区山吹町294 小久保ビル2階/地下鉄東西線神楽坂駅から徒歩7分、有楽町線江戸川橋駅から徒歩4分/℡03-6907-2239/正午~午後8時、火曜休み(祝日なら営業)
ウチの推し本
「かみあわないノーマ」アン・カーソン著、小磯洋光訳
「原題は『Wrong Norma』。24年度全米批評家協会賞受賞作で、著者はノーベル文学賞を受賞するのでは、と言われ続けているカナダの詩人です。thoasa初めての翻訳出版。ジョセフ・コンラッド、雪、貧困などをテーマにした25編。散文詩、会話詩、講義形式に加え、著者自身のドローイングも収録。『文字が並ぶものだけが詩ではない』と感じさせ、入り込むほどに奥深い詩集です」
(thoasa刊 3850円)



















