24時間首を絞められている感覚が…天才ナカムラスペシャルさん下咽頭がんを語る
天才ナカムラスペシャルさん(役者 アーティスト/57歳)=下咽頭がん
術後は、というか今もずっとそうなんですけど、常に呼吸が苦しいです。まるで落ち武者の悪霊に首を絞められているような感覚が24時間続いています。最初は「こんな状態で大丈夫か?」と不安でしたが、おかげさまで慣れました。苦しいのが普通の状態です。
飲食や発声も、本当のことを言えば今でもキツイです。キツイですけど、そう悟られないように普通に食べたりしゃべったりしているように見せる術を覚えました。声を残せたのだから、そのくらいは仕方ありません。
喉に膜が張ったような違和感を持ったのは2020年10月でした。「風邪だろう」ぐらいの軽い気持ちで近所の耳鼻科を受診したら、大学病院を紹介されて、「がんの疑いがあるけれど、悪性じゃない可能性がある」と言われ、いろいろな検査を受けました。後日、結果を聞きに行くと、予約時間に行ったのに自分の名前は全然呼ばれなくて、その時点で嫌な予感がしました。待合室で最後のひとりになってやっと名前が呼ばれた結果、案の定「悪性」でした。しかもステージ3とのこと。
でも、当時は「ステージ10ぐらいまであるのか?」と考えたくらいがんには無知でした。ステージ3がどんなにやばい状況なのかを知ったのは、家に帰ってネット検索してからです。
医師からは、抗がん剤や放射線などの治療法もあるけれど、最善なのは手術で声帯を含めた喉のすべてを摘出すること。「声は出なくなるけれど、それがベストだ」と告げられました。その日は茫然自失でした。病院からの帰り、乗るべきバスを間違えて、まったく知らない駅に到着してしまったくらい動揺しました。
でもステージ3の意味を知ってなお、「こんなちょっとした違和感だけで声帯を取るなんてありえない!」と、セカンドオピニオンで別の大きな大学病院に行きました。きっといい話が聞けると期待したのですが、そこでは「ステージ3じゃない、4だよ。リンパにも転移しているから前の病院で言われた通り、喉の全摘出をしないとダメだ」と聞かされました。
立派な大学病院2つにそう言われたのだから、そりゃもう覚悟するしかないですよ。だから、一度は本当に全摘を覚悟したのです。でも、声を出せない生活を具体的に頭の中でシミュレーションしてみたら、「否、これは生活できないな」と思い、気が変わりました。
というのも、じつはこの数カ月前に嫁さんが家を出ていってしまったのです。自分にはほかに頼れる親戚も兄弟もなく、去年他界した母親は当時老人ホームにいて、まったくのひとり暮らし。なにかあっても助けも呼べない。やはり「声が出ないのは嫌だな」と思ったのです。
そこで、最後にがん専門病院でサードオピニオンを受けました。一番偉い先生が診てくれた診断も「全摘がベスト」でした。でも、先生はこう続けました。「ただ、あなたがサードオピニオンまでして声を残したいのであればなんとかしましょう」と。
運良く翌月キャンセルが出たそうで、手術枠がありました。ただし、声帯を残してがん細胞を取り去るのはかなり強引な手術なので、再発のリスクは否めないとのことでした。


















