控えも腐らず好機に適時打 田中浩「トレード要員」からの逆襲
「今は試合に出ることが当たり前ではない。毎日が必死。仕事があるということが喜びです」
ヤクルト田中浩康(32)が久々に上がったお立ち台。今季に野球人生を懸けるベテランの言葉に実感がこもった。
8日の中日戦。延長十回2死満塁の好機で打席が回ってきた。4日前に頭部死球を受けて途中退場。その影響を微塵も感じさせず、中日・浅尾の直球を踏み込んで左前にはじき返すと、右手人さし指を天に突き上げて一塁ベースを回った。
チームの主将に指名された13年から成績は右肩下がり。山田哲の台頭で二塁のポジションを奪われ、昨季は77試合の出場にとどまった。今年で33歳。オフにはトレード要員に挙がった。真中新監督から勧められ、今季は経験のない外野にも挑戦。失った出場機会を少しでも取り戻すため、キャンプから泥にまみれた。
バレンティンが出遅れる中、同じ外野手のミレッジも開幕直後に故障で離脱。開幕2カード目の阪神戦から右翼でスタメン出場し、ここまで打率.391と結果を出し続けている。
この日は九回無死一、二塁の場面ではきっちりと送りバントを決めた。なくてはならない存在に戻りつつある。