甲子園中止は大正解 勝利至上主義に感染リスクと問題山積

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「あくまで高校野球教育の一環ということに照らし合わせると、中止を決定せざるを得なかった。球児の安心、安全に最大限配慮し、苦渋の決断であることをわかっていただきたい」

 20日、夏の甲子園と各都道府県の地方大会の中止を発表した高野連の八田英二会長(71)は、何度も「教育の一環」という言葉を繰り返した。

 しかし、高校野球が教育の一環なんてだれも思っちゃいないし、建前に過ぎない。春夏の甲子園はアマスポーツ界最大のイベントであり、甲子園を巡っては多くの人と巨額のカネが動く。例えば強豪校は甲子園を目指すために、全国の逸材を奪い合う。昨夏の甲子園は約6・6億円の収入があり、2・1億円もの剰余金(利益)が出た。高野連の収支報告書(2018年度)によれば、約18億円もの純資産を持っている。無観客でも開催できる体力はあるわけだから、中止になっても痛くもかゆくもない。世間では甲子園開催を求める声が多かったが、要するに主催者にはコロナ禍をはね返すだけの力も知恵もなかったということだ。

 高校野球は「甲子園がすべて」という図式が出来上がっている。

 甲子園でヒーローになれば、多くのファンから注目され、かつての松坂大輔のようなスター選手が生まれる。活躍しなくても、甲子園に出ただけで進学や就職において有利になる。いまの3年生たちはそのチャンスがなくなったわけだから、ダメージは大きい。

 プロ球界にとっても、甲子園は高校球児を評価したり、発掘したりできる格好の場。大観衆が見守る晴れの舞台でのパフォーマンスは、選手の実力を見極める大きな材料になるからだ。コロナ禍により、アマ選手の視察ができない状態が続いているプロのスカウトたちにとってはかなりの痛手だ。

 が、甲子園の春夏連続の中止はマイナスばかりではない。問題だらけの高校野球の在り方を見直すいい機会になり得ることを考えれば、むしろプラスの方が大きいのではないか。

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