鈴木誠也と大谷翔平の整理整頓まで「神扱い」の違和感 米国人が“唾履きゴミベンチ”でもへっちゃらな謎解き

公開日: 更新日:

「鈴木のパワーがカブスを勝利に導いた」(大リーグ公式サイト)、「鈴木が米国に才能を持ち込んだ」(CBSスポーツ電子版)、「鈴木の2本塁打がカブスに勝利をもたらした」(ESPN電子版)……。

 米メディアが大騒ぎしたのも無理はない。カブスの鈴木誠也(27)が日本時間13日のパイレーツ戦で2戦連続となる先制2号ソロと3号ソロ本塁打。カブスは鈴木ひとりのバットで2-1と勝利したのだ。

「5番・右翼」で出場した14日のパ軍戦は3打数1安打1打点。4点を追う四回、4試合連続打点となる中前適時打を放ったが、チームの勝利には結びつかなかった。相手の筒香は「4番・一塁」で出場し、2打数無安打2四球1三振だった。

■2打席連続HRはともかく…

 チームに入団して1カ月足らずの日本人ルーキーが、日本のプロ野球とは環境も対戦する投手の質も異なる中、開幕から結果を出している。米メディアから称賛されるのも当然とはいえ、鈴木や昨年ア・リーグMVPを獲得したエンゼルスの大谷翔平(27)に関して、ちょっと待ったと言いたくなるような米メディアの報道があるのも事実だ。

「誠也は他人に配慮 これが大好きだ」

 先日、鈴木がネクストバッターズサークルに散らばっていた滑り止めスプレーを1カ所に集めて打席に向かうシーンを、カブス傘下の球団カメラマンがツイッターに「誠也は他人に配慮している。これが大好きだ」と投稿。するとファンも「彼がカブスを選んでくれてうれしい」「ささいな事だけどここが違うのさ」などと反応した。

 かと思えば、昨シーズン中、大谷が打席に向かう途中、さりげなくグラウンドに落ちていたゴミを拾ってポケットに入れた行為を地元メディアは、まるで大ごとのように動画付きで公開。同様にファンから称賛された。

 大谷がファンの子供の頭をポンポンとたたいたり、ファンがグラウンドに落としたサングラスを投げ返したりした行為もまた「神対応」だと米メディアは報じている。

仕事を奪うことになる

 しかし、散らかっているスプレーを1カ所にまとめたり、落ちているゴミを拾ったりなんてのは、ある意味、当然の行為ではないのか。

 そういえば日米野球が終わった後の米国チームのベンチには、選手がペッと吐き捨てた唾やら、ひまわりの種やら、飲み残しの紙コップなどがそこかしこに散らばっている。米国には身の回りを片付けたり、きれいにする習慣がないのか。

 野球文化学会会長で名城大准教授の鈴村裕輔氏はこう言った。

「スプレーを片付けるのはバットボーイの仕事ですし、ゴミを拾う専門の人もいる。なのにスプレーを片付けたり、ゴミを拾うという行為は、彼らの仕事を奪うことになるというとらえ方を米国ではします。なので選手全員が鈴木や大谷のような行いをすれば非難されかねませんけど、そういった風潮の中でひとり、整理整頓する行為は東洋の珍しい習慣としてとらえられています。異質な文化を認める、多様性を受け入れることになるのです。ただ、実績や実力のない選手が同じことをしても好意的には受け取られませんが……」

 松井秀喜が初めて、ヤンキースのキャンプ地球場に行って驚いたことがある。外野の芝生に栄養ドリンクの空き瓶が転がっていたからだ。拾い上げて捨てれば、掃除をする人の仕事を奪うことになるかもしれないが、空き瓶につまずいて転んだら危ないとは考えないのか。

 ベンチの床に唾を吐き散らし、ドリンクを床に捨てるのも同様の理由だろうが、だれかが滑って転んだら危険だとは思わないのだろうか。

「基本的に転んだ方が悪い、空き瓶を片付けない人が悪いと考えます。米国の会社で自分のデスクの整理整頓ができない社員は失格の烙印を押されますし、必ずしも米国人がだらしないということはないでしょう。自分のことはきちんとしたい米国と、自分だけでなく他人のこともきちんとしたい日本の文化の違いでしょうね」(前出の鈴村氏)

 例えば、米国のスーパーに行っても、肉はドーンとでっかい塊がほとんどで、薄切りはほとんど置いてない。料理の味付けは極端にいえば、塩っ辛いか甘いか。車も何より大型車が好まれる。野球でも剛速球投手、ホームランバッターが人気だ。そういった社会で、他人のことまで考えて整理整頓やゴミを拾う鈴木や大谷は奇特な存在に映っているということか。 

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ドジャース佐々木朗希に向けられる“疑いの目”…逃げ癖ついたロッテ時代はチーム内で信頼されず

  2. 2

    ドジャース佐々木朗希の離脱は「オオカミ少年」の自業自得…ロッテ時代から繰り返した悪癖のツケ

  3. 3

    注目集まる「キャスター」後の永野芽郁の俳優人生…テレビ局が起用しづらい「業界内の暗黙ルール」とは

  4. 4

    柳田悠岐の戦線復帰に球団内外で「微妙な温度差」…ソフトBは決して歓迎ムードだけじゃない

  5. 5

    女子学院から東大文Ⅲに進んだ膳場貴子が“進振り”で医学部を目指したナゾ

  1. 6

    大阪万博“唯一の目玉”水上ショーもはや再開不能…レジオネラ菌が指針値の20倍から約50倍に!

  2. 7

    ローラの「田植え」素足だけでないもう1つのトバッチリ…“パソナ案件”ジローラモと同列扱いに

  3. 8

    ヤクルト高津監督「途中休養Xデー」が話題だが…球団関係者から聞こえる「意外な展望」

  4. 9

    “貧弱”佐々木朗希は今季絶望まである…右肩痛は原因不明でお手上げ、引退に追い込まれるケースも

  5. 10

    備蓄米報道でも連日登場…スーパー「アキダイ」はなぜテレビ局から重宝される?