映画作家カプランのセンスが光る傑作喜劇4本

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「ネリーに気をつけろ! ネリー・カプラン レトロスペクティヴ」

 昔は年末になると「年忘れ喜劇祭」なんて名目で旧作を一挙上映する地元の映画館があったものだ。今年は珍しくもそんな雰囲気の特集上映が年末にロードショーされる。

「ネリーに気をつけろ! ネリー・カプラン レトロスペクティヴ」である。

 あまり聞かない名前だが、アルゼンチン出身の仏映画の女性監督。「ヌーヴェルヴァーグの周縁で見落とされていたシネアスト」を惹句に、1969年の長編第1作から91年の最後の劇場公開作までの計4本が上映される。女性監督の再評価というとお題目のようにフェミニズム話になりがちだが、それはどうだろう。

 確かに第1作の「海賊のフィアンセ」は徹底して反抗的な娘の話だし、最後の「愛の喜びは」は痛い目に遭うドンファン気取りの男の話だが、共通してきわだつのは低俗に流れない喜劇センスだ。

 どの作品もオープニング場面からしてほどよく好趣をかき立てる。「愛の──」は輝く南洋の海を飛ぶ飛行艇、2作目の「パパ・プティ・バトー」は仏海軍の閲兵行進に割り込んだ半裸の娘という珍景で見る者を引っ張る。作家的様式はないが絵と話のセンスがよく、「年忘れ喜劇」にふさわしい、近ごろの映画にない伸びやかさがいい。女優たちの裸体も現代のようにギスギスした体つきでなく、大玉キャベツのようなお尻で思わず笑みがもれる。インタビューで彼女が語ったというオトコ批判のたぐいは、昔から明敏な女なら誰もが口にしてきたのだ。

 彼女の笑いは現代というより中世を思わせるものがある。思えば艶笑譚という文学ジャンルは中世民話を後世の作家がまとめたもの。バルザックがことに有名だが、ここは近世初期のイタリアのストラパローラ著「愉しき夜」(平凡社 3520円)を紹介したい。艶笑というより教訓味のやや勝った昔話集である。 〈生井英考〉

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