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鈴村裕輔野球文化学会会長・名城大教授

1976年、東京都出身。法政大学博士(学術)。名城大学外国学部教授。主な専門は政治史、比較思想。野球史研究家として日米の野球の研究にも従事しており、主著に「MLBが付けた日本人選手の値段」(講談社)がある。スポーツを取り巻く様々な出来事を社会、文化、政治などの多角的な視点から分析している。アメリカ野球学会会員。

米国の金融不安で今オフにダメージを受けるのはどんなメジャーリーガーか

公開日: 更新日:

 大リーグの公式戦の総来場者数は、09年には前年よりも約500万人少ない約7343万人となり、金融危機が家計に影響を与えたことを推察させた。しかも金融危機による不況が収束し、09年6月からは景気が拡大局面を迎えても観客動員数は伸び悩んだことで、各球団は大型の補強を控えるなど、消極的な経営を行うようになった。

 その結果、09年オフのフリーエージェント市場は買い手有利となり、ジャロッド・ウォッシュバーンのような中堅選手の間で、契約に至らず引退する事例が起きている。

 今回の金融不安の場合はどうだろうか。

 現在、米国では雇用が市場の予測よりも拡大し、平均時給も上昇している。そのため、連邦準備制度理事会(FRB)は過剰な雇用の拡大と平均時給の上昇は物価騰貴を加速させるとして、インフレ抑制を優先させる姿勢を示している。

 SVBの破綻はFRBによる高金利政策への対応の遅れが原因であった。これは、今後も十分な適応力のない金融機関が破綻する可能性を示唆する。

 そうなれば、従来は中程度の成績の選手でも、大型契約を結べた売り手市場は姿を消し、今オフの各球団は08年の金融危機後のように積極的な補強を見合わせることになる。

 この時、群を抜く実績を残す大物選手か安い年俸でも契約できる若手選手に比べ、実力よりも高めの契約と思われている選手が行き場を失うことになりかねない。その意味で、これから契約更新の時期を迎える選手のうち、少なからぬ者にとっては厳しい交渉が待っているのである。

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