優勝しても得点王になっても、給料はヤンマー退社まで一般社員と同じやった
「ヤンマーに行くことにした」と伝えると森ちょんは、いつもの柔和な表情で「気にすることはない。サッカーを続けるならいいさ。東西で日本サッカーをもり立てていこうじゃないか」。心のモヤモヤがスッと晴れた。
今さらの話に過ぎないことは重々承知しているけど……。ヤンマー本社での話し合いが終わってから、いささか気分を害したことがあった。
同席していた人事部長に近寄って、こう聞いた。
「もうすぐ日本代表の欧州遠征で約1カ月、日本を留守にします。12月にはタイ・バンコクでアジア大会があります。入社試験は、いつ受けたらいいのでしょうか?」
人事部長は、表情を変えずにこう言った。
「入社試験? 今、終わりました。入社は正式に決まりました。一応言っておきますけど、ウチの入社試験は難しくて、入社するのが大変なんですよ。釜本さんは(正規の入社)試験を受けて入れると思いますか?」
まったくもっておっしゃる通り──と言うしかあらへんけど、思いっ切り出はなをくじかれた気がしたことを今でも覚えてる。