「人魚ノ肉」木下昌輝著

公開日: 更新日:

 大政奉還の翌月、倒幕開国に奔走する坂本竜馬は同志の中岡慎太郎と隠れ家の京都近江屋で江戸に都を移す算段をしていた。腹が減って仕方がない竜馬は、少年時代に故郷の桂浜で打ち上げられた人魚の肉を食べたことを思い出す。食べれば不老不死といわれる人魚の肉だが、一緒に食べた岡田以蔵は今はもういない。以蔵と竜馬は、その後、三日三晩荒れ狂い家に閉じ込められたが、竜馬が覚えているのは以蔵の目に宿った狂気だけだった。慎太郎は、竜馬から以蔵が保管していた人魚の肉と血がいまだに腐らずどこかに存在しているはずだと聞く。(「竜馬ノ夢」)

 幕末の京都を舞台に、歴史上の人物たちが「人魚ノ肉」にとりつかれるさまを描いた妖奇譚集。

(文藝春秋 1550円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    阪神・梅野がFA流出危機!チーム内外で波紋呼ぶ起用法…優勝M点灯も“蟻の一穴”になりかねないモチベーション低下

  2. 2

    梅野隆太郎は崖っぷち…阪神顧問・岡田彰布氏が指摘した「坂本誠志郎で捕手一本化」の裏側

  3. 3

    「高市早苗首相」誕生睨み復権狙い…旧安倍派幹部“オレがオレが”の露出増で主導権争いの醜悪

  4. 4

    巨人・戸郷翔征は「新妻」が不振の原因だった? FA加入の甲斐拓也と“別れて”から2連勝

  5. 5

    国民民主党「選挙違反疑惑」女性議員“首切り”カウントダウン…玉木代表ようやく「厳正処分」言及

  1. 6

    時効だから言うが…巨人は俺への「必ず1、2位で指名する」の“確約”を反故にした

  2. 7

    パナソニックHDが1万人削減へ…営業利益18%増4265億円の黒字でもリストラ急ぐ理由

  3. 8

    ドジャース大谷翔平が3年連続本塁打王と引き換えに更新しそうな「自己ワースト記録」

  4. 9

    デマと誹謗中傷で混乱続く兵庫県政…記者が斎藤元彦県知事に「職員、県議が萎縮」と異例の訴え

  5. 10

    阪神に「ポスティングで戦力外」の好循環…藤浪晋太郎&青柳晃洋が他球団流出も波風立たず