「池田屋乱刃」伊東潤著

公開日: 更新日:

 元治元(1864)年6月5日、京都三条の旅館・池田屋に長州藩・土佐藩等の尊攘派志士二十数人が集まっていた。長州藩の陰の外交を担っていた枡屋こと古高俊太郎捕縛の報を受け、古高奪還の協議をしていたのだ。そこを近藤勇以下新選組隊士が襲い、尊攘派は大打撃を受ける。本書は幕末の流れを大きく変えたこの池田屋事件をさまざまな視点から描いた連作長編。

 新選組副長の土方歳三にスパイとして尊攘志士の中枢に送り込まれたものの次第に志士たちの熱に取り込まれていく福岡祐次郎。坂本龍馬と共に神戸海軍操練所に参加し国防・北方開拓を志すも、志士たちの情念にほだされあえて死地に赴く北添佶摩。吉田松陰と東北地方を旅し、松陰死後はその遺志を引き継ぎ若き志士たちを束ねていく宮部鼎蔵。

 そして松下村塾四天王のひとりとして将来を嘱望されていながら無念の死を遂げる吉田稔麿。長州藩京都留守居役の重責を担いながら年下の俊才桂小五郎の脇に追いやられ冷や飯を食わされた乃美織江。立場は違えど国難に殉じていった志士たちへの真情あふれる鎮魂歌。

(講談社 1600円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    NHK朝ドラ「ばけばけ」が途中から人気上昇のナゾ 暗く重く地味なストーリーなのに…

  2. 2

    ドジャース大谷翔平32歳「今がピーク説」の不穏…来季以降は一気に下降線をたどる可能性も

  3. 3

    「おまえもついて来い」星野監督は左手首骨折の俺を日本シリーズに同行させてくれた

  4. 4

    ドジャース佐々木朗希の心の瑕疵…大谷翔平が警鐘「安全に、安全にいってたら伸びるものも伸びない」

  5. 5

    巨人大ピンチ! 有原航平争奪戦は苦戦必至で投手補強「全敗」危機

  1. 6

    巨人が李承燁コーチ就任を発表も…OBが「チグハグ」とクビを傾げるFA松本剛獲得の矛盾

  2. 7

    衝撃の新事実!「公文書に佐川氏のメールはない」と財務省が赤木雅子さんに説明

  3. 8

    ドジャース首脳陣がシビアに評価する「大谷翔平の限界」…WBCから投打フル回転だと“ガス欠”確実

  4. 9

    高市首相が漫画セリフ引用し《いいから黙って全部俺に投資しろ!》 金融会合での“進撃のサナエ”に海外ドン引き

  5. 10

    日本ハムはシブチン球団から完全脱却!エスコン移転でカネも勝利もフトコロに…契約更改は大盤振る舞い連発