「純喫茶」姫野カオルコ著

公開日: 更新日:

 西暦2000年のある金曜日の夜、スターバックスで夕食をとる私の脳裏に、3歳10カ月のときの出来事が鮮明によみがえる。

 その夜、父は、突然「特急こだま」の玩具が欲しいと駄々をこねた私を自転車に乗せ、「大阪チェーンストア」に連れていき、店員に無理を言って、閉店後の店内に入れてもらった。私が一人っ子だと知り、そのわがままに納得していた店員たちの表情まで思い出す。そのとき、私は別にこだまが欲しいわけではなかった。私は父が44歳のときの子で、3歳10カ月の私の目にも父と母の結婚は幸せそうには映らなかった。(「特急こだま東海道線を走る」)

 息苦しくなるほど鮮明に覚えている幼い日々の記憶を題材にした短編集。(PHP研究所 540円+税)





【連載】文庫あらかると

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    永野芽郁「キャスター」視聴率2ケタ陥落危機、炎上はTBSへ飛び火…韓国人俳優も主演もとんだトバッチリ

  2. 2

    佐々木朗希「スライダー頼み」に限界迫る…ドジャースが見込んだフォークと速球は使い物にならず

  3. 3

    「たばこ吸ってもいいですか」…新規大会主催者・前澤友作氏に問い合わせて一喝された国内男子ツアーの時代錯誤

  4. 4

    永野芽郁「二股不倫」報道でも活動自粛&会見なし“強行突破”作戦の行方…カギを握るのは外資企業か

  5. 5

    周囲にバカにされても…アンガールズ山根が無理にテレビに出たがらない理由

  1. 6

    インドの高校生3人組が電気不要の冷蔵庫を発明! 世界的な環境賞受賞の快挙

  2. 7

    三山凌輝に「1億円結婚詐欺」疑惑…SKY-HIの対応は? お手本は「純烈」メンバーの不祥事案件

  3. 8

    永野芽郁“二股不倫”疑惑「母親」を理由に苦しい釈明…田中圭とベッタリ写真で清純派路線に限界

  4. 9

    佐藤健と「私の夫と結婚して」W主演で小芝風花を心配するSNS…永野芽郁のW不倫騒動で“共演者キラー”ぶり再注目

  5. 10

    “マジシャン”佐々木朗希がド軍ナインから見放される日…「自己チュー」再発には要注意