著者のコラム一覧
北上次郎評論家

1946年、東京都生まれ。明治大学文学部卒。本名は目黒考二。76年、椎名誠を編集長に「本の雑誌」を創刊。ペンネームの北上次郎名で「冒険小説論―近代ヒーロー像100年の変遷」など著作多数。本紙でも「北上次郎のこれが面白極上本だ!」を好評連載中。趣味は競馬。

「終わりなき道」ジョン・ハート著 東野さやか訳

公開日: 更新日:

 すべてが傑作、という作家はめったにいない。どんなに素晴らしい作家でも、やややと思う作品があったりする。ところが中には例外もあって、それが今回紹介するジョン・ハート。これまで翻訳された「キングの死」「川は静かに流れ」「ラスト・チャイルド」「アイアン・ハウス」の4作すべてが傑作だからすごい。とんでもない作家である。この4作に共通するのは、すべてが秀逸なミステリーであることと、胸に残る家族小説であることだ。ミステリーと家族小説がお好きな方はぜひチェックされたい。

 今度の「終わりなき道」も、これまでのジョン・ハートの諸作と同様に、ミステリーであると同時に家族小説だ。ホントにうまい。

 主人公は刑事のエリザベス。少女監禁犯を拷問の果てに射殺したとして、州警察の調査の対象になっている。「拷問の果てに射殺」とは何なのか。それがどういう状況であったのか。それは読者になかなか明かされない。エリザベスが語ろうとしないからだ。

 もうひとつは、エリザベスの元同僚エイドリアン。彼はある女性を殺した罪で服役していたのだが、何も語らず釈放されたあとも寡黙なまま。この2人の過去が、ゆっくりと静かに立ち上ってくる。どうしてこれが家族小説であるのかは、ストーリーに絡むことなのでここに書けない。とてもすてきなラストまで一気読みの傑作であると書くにとどめておく。未読の方は前4作も続けて読まれたい。(早川書房 2100円+税)

【連載】北上次郎のこれが面白極上本だ!

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    巨人がもしFA3連敗ならクビが飛ぶのは誰? 赤っ恥かかされた山口オーナーと阿部監督の怒りの矛先

  2. 2

    大山悠輔が“巨人を蹴った”本当の理由…東京で新居探し説、阪神に抱くトラウマ、条件格差があっても残留のまさか

  3. 3

    悠仁さまの筑波大付属高での成績は? 進学塾に寄せられた情報を総合すると…

  4. 4

    大山悠輔に続き石川柊太にも逃げられ…巨人がFA市場で嫌われる「まさかの理由」をFA当事者が明かす

  5. 5

    織田裕二がフジテレビと決別の衝撃…「踊る大捜査線」続編に出演せず、柳葉敏郎が単独主演

  1. 6

    ロッテ佐々木朗希は母親と一緒に「米国に行かせろ」の一点張り…繰り広げられる泥沼交渉劇

  2. 7

    ヤクルト村上宗隆と巨人岡本和真 メジャーはどちらを高く評価する? 識者、米スカウトが占う「リアルな数字」

  3. 8

    どうなる?「トリガー条項」…ガソリン補助金で6兆円も投じながら5000億円の税収減に難色の意味不明

  4. 9

    「天皇になられる方。誰かが注意しないと…」の声も出る悠仁さまの近況

  5. 10

    タイでマッサージ施術後の死亡者が相次ぐ…日本の整体やカイロプラクティック、リラクゼーションは大丈夫か?