「よりみち酒場 灯火亭」石川渓月著
広告代理店に入社して7年、がむしゃらに働いてきた亜海は、プロジェクトマネジャーを任されるまでになった。しかし、接待の席でクライアントの誘いを断った亜海は、逆恨みされ、謹慎処分を受けてしまう。おまけに恋人にも振られ、人生のどん底に突き落とされた亜海は、ある夜、居酒屋「灯火亭」の暖簾をくぐる。カウンターに立つ店主のユウは装いも言葉遣いも女性だが、声は明らかに男性だった。
黒糖焼酎のお湯割りを頼んだ亜海に、ユウは故郷奄美の定番料理「豚の角煮」をそっと出してくれる。常連らによると、ユウの角煮を食べられるのは運がいいらしい。(「故郷の味」)
灯火亭の料理と酒が、人生に迷った人々を癒やす連作人情小説。
(光文社 680円+税)