「終りなき夜に生れつく」恩田陸著

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 本年度上期の直木賞を受賞した著者だが、本書は、4年前に直木賞候補となったダークファンタジー「夜の底は柔らかな幻」のスピンオフ短編集。

 冒頭の「砂の嵐」には「夜の底――」の主人公、実邦の友人で女医のみつきとバーのマスター、軍勇司が登場する。アフリカ北部に医療支援ボランティアとして参加したみつきと勇司。彼らがいる村は彼らの故郷「途鎖」と同じく、イロという特殊能力を持つ在色者が多くいる地域だ。この村では不可解な殺人事件が起きていた。共に「在色者」であるみつきと勇司は不穏な空気を感じていたが、ある夜、突然チェスの駒が舞い上がり、天空には少女が浮かんでいた……。

 続く「夜のふたつの貌」「夜間飛行」では、冷徹な入国管理局次長、葛城晃の若き日の姿と、彼が入国管理官になる経緯、最後の表題作は途鎖の山奥にある「フチ」のリーダーで大犯罪者の神山倖秀の前歴が描かれる。

 独立した物語としても楽しめるが、「夜の底―─」と併読すると面白さが増す。(文藝春秋 1500円+税)

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