「終りなき夜に生れつく」恩田陸著

公開日: 更新日:

 本年度上期の直木賞を受賞した著者だが、本書は、4年前に直木賞候補となったダークファンタジー「夜の底は柔らかな幻」のスピンオフ短編集。

 冒頭の「砂の嵐」には「夜の底――」の主人公、実邦の友人で女医のみつきとバーのマスター、軍勇司が登場する。アフリカ北部に医療支援ボランティアとして参加したみつきと勇司。彼らがいる村は彼らの故郷「途鎖」と同じく、イロという特殊能力を持つ在色者が多くいる地域だ。この村では不可解な殺人事件が起きていた。共に「在色者」であるみつきと勇司は不穏な空気を感じていたが、ある夜、突然チェスの駒が舞い上がり、天空には少女が浮かんでいた……。

 続く「夜のふたつの貌」「夜間飛行」では、冷徹な入国管理局次長、葛城晃の若き日の姿と、彼が入国管理官になる経緯、最後の表題作は途鎖の山奥にある「フチ」のリーダーで大犯罪者の神山倖秀の前歴が描かれる。

 独立した物語としても楽しめるが、「夜の底―─」と併読すると面白さが増す。(文藝春秋 1500円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    カーリング女子フォルティウス快進撃の裏にロコ・ソラーレからの恩恵 ミラノ五輪世界最終予選5連勝

  2. 2

    南原清隆「ヒルナンデス」終了報道で心配される“失業危機”…内村光良との不仲説の真相は?

  3. 3

    契約最終年の阿部巨人に大重圧…至上命令のV奪回は「ミスターのために」、松井秀喜監督誕生が既成事実化

  4. 4

    「対外試合禁止期間」に見直しの声があっても、私は気に入っているんです

  5. 5

    高市政権「調整役」不在でお手上げ状態…国会会期末迫るも法案審議グダグダの異例展開

  1. 6

    円満か?反旗か? 巨人オコエ電撃退団の舞台裏

  2. 7

    不慮の事故で四肢が完全麻痺…BARBEE BOYSのKONTAが日刊ゲンダイに語っていた歌、家族、うつ病との闘病

  3. 8

    箱根駅伝3連覇へ私が「手応え十分」と言える理由…青学大駅伝部の走りに期待して下さい!

  4. 9

    「日中戦争」5割弱が賛成 共同通信世論調査に心底、仰天…タガが外れた国の命運

  5. 10

    近藤真彦「合宿所」の思い出&武勇伝披露がブーメラン! 性加害の巣窟だったのに…「いつか話す」もスルー