「カラダの知恵 細胞たちのコミュニケーション」三村芳和著
地球上では、73億人が6000近い言語を操って生活している。同じように人間のカラダの中には200種類以上の細胞が37兆個集まり、密なコミュニケーションをとることでカラダを維持し、頭を働かせている。本書はその情報伝達をわかりやすく解説した一冊だ。
興味深いのは著者が研修医時代に遭遇した末期がん患者の劇的変化。ただのビタミンを新薬と思い込むことで、がん症状が一変したという。いわゆるプラセボ(偽薬)効果だが、2004年の「英国医学会会報」によるとイスラエルでは医師の60%はプラセボを処方し、処方した94%の医師が臨床的なプラセボ効果を信じていたそうだ。
免疫細胞が暗示にかかり、気持ちが遺伝子を動かす。人間のカラダに潜む知恵と不思議が紹介されている。(中公新書 880円+税)