「たゆたえども沈まず」原田マハ著

公開日: 更新日:

 舞台は、19世紀末のパリ。日本美術を扱う美術商「若井・林商会」の林忠正のもとで働くため、加納重吉が期待に胸を弾ませて日本からパリへやってきたところから物語は始まる。

 開成学校でパリへの留学を夢見ていた重吉にとって、一足先にパリに足を踏み入れ、美術市場にジャポニズム旋風を巻き起こしていた林は憧れの存在だった。重吉は林に誘われるようにして、パリ美術界の一員となっていく。そこで出会ったのは、ストイックかつ不器用に自分の絵の世界を追求し続けるゴッホと、そんなゴッホの才能を信じて全力で支えようとする弟のテオ。重吉は、ジャポニズムとフランス絵画の交流を通して、フランス美術界に今までにはなかった全く新しい絵画が生まれる瞬間を目撃しつつあった。

 アート小説という一分野を切り開いた著者による最新作。有名なゴッホとゴーギャンのエピソードなども盛り込みながら、ゴッホという不遇の画家の一生を日本人美術商との交流を通して描いていく。当時のパリの美術界に、浮世絵などに代表される日本絵画が大きな影響を与えていたことがリアルに伝わってくる。

(幻冬舎 1600円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ヤクルト村上宗隆と巨人岡本和真 メジャーはどちらを高く評価する? 識者、米スカウトが占う「リアルな数字」

  2. 2

    大山悠輔が“巨人を蹴った”本当の理由…東京で新居探し説、阪神に抱くトラウマ、条件格差があっても残留のまさか

  3. 3

    中山美穂さんの死を悼む声続々…ワインをこよなく愛し培われた“酒人脈” 隣席パーティーに“飛び入り参加”も

  4. 4

    ロッテ佐々木朗希は母親と一緒に「米国に行かせろ」の一点張り…繰り広げられる泥沼交渉劇

  5. 5

    大谷翔平の28年ロス五輪出場が困難な「3つの理由」 選手会専務理事と直接会談も“武器”にならず

  1. 6

    陰で糸引く「黒幕」に佐々木朗希が壊される…育成段階でのメジャー挑戦が招く破滅的結末

  2. 7

    豊作だった秋ドラマ!「続編」を期待したい6作 「ザ・トラベルナース」はドクターXに続く看板になる

  3. 8

    巨人・岡本和真の意中は名門ヤンキース…来オフのメジャー挑戦へ「1年残留代」込みの年俸大幅増

  4. 9

    悠仁さまは東大農学部第1次選考合格者の中にいるのか? 筑波大を受験した様子は確認されず…

  5. 10

    中山美穂さんが「愛し愛された」理由…和田アキ子、田原俊彦、芸能リポーターら数々証言