「ローカル鉄道がゆく」K&Bパブリッシャーズ編集部編

公開日: 更新日:

 全国のローカル鉄道は、従来の人口減少に加え、コロナ禍による外出自粛で、より一層の窮地に立たされ、各地で廃線の危機にある。また近年では、災害の被害に遭い、バス運行への転換が進む路線や、再開時期が未定のまま不通が続く路線も増えている。

 もともと、都市部から離れた地域を通るローカル鉄道は、1日に3~4本しか走らない路線もあるなど、乗客も少なく、閑散としており、多くは赤字だ。しかし、それゆえに沿線は豊かな自然に恵まれ、車窓からの眺めはとびきりの絶景、さらに方言で交わされる車内の会話や、地域色豊かな駅舎など、それぞれの土地の日常が感じられ、旅情を誘う。

 本書は、そんな魅力が詰まった全国各地のローカル鉄道を紹介する写真集。第1章は「花と列車」と題し、沿線に咲き乱れる花々とローカル鉄道とのコラボレーション写真が並ぶ。

 佐賀県の「松浦鉄道西九州線」の浦ノ崎駅では、昭和5(1930)年の駅開業当時から地域住民が育ててきたソメイヨシノが桜のトンネルをつくり出している。

 他にも、築堤を埋め尽くす菜の花に染まったかのようにクリーム色の車体に青いラインが映えるJR日田彦山線(福岡県)や、夜空に輝く星をイメージしたかのような青い車体が白やピンクが織り成す芝桜の絨毯の上を進む北海道「道南いさりび鉄道」の「ながまれ号」、一面に白い花が咲き誇るソバ畑に黄色い車体がよく映える三重県の「三岐鉄道三岐線」、そして富山県の「あいの風とやま鉄道」では、行く手の片側に名産のチューリップ畑、そして反対側は残雪の立山連峰の大パノラマが楽しめる。

 ここまでページを繰っただけで、もう、どこかへ旅に出かけたくなる。

 続く章では「鉄橋を渡る」ローカル鉄道が登場。

 福島県のJR只見線では、土地でよく見られる桐の花に由来する薄紫色にペイントされた第一只見川橋梁の美しいアーチが川霧に包み込まれ、幻想的な風景をつくり出している。

 はちみつ色にそまった夕焼けの中、カーブを描きながら長さ716メートルもの橋を渡っていく井原鉄道井原線(岡山県)や、大洲城が見下ろす肱川を渡るJR予讃線(愛媛県)など、日本の風景にローカル鉄道はよく似合う。

 また、中国山地を縦断する途中、まるで森の中から顔を出すかのように現れたJR木次線(島根県)などのトンネルとローカル鉄道をはじめ、雪で覆われた北アルプスの巨大な山塊が背後に迫るJR大糸線(長野県)などの雪景色、そしてノスタルジーをかきたてる駅舎や、海の近くを走る路線まで。

 惜しまれつつ引退してしまった車両の雄姿も含め、100余両のローカル鉄道のベストショットを収録。

 もう二度と合えなくなる前に、そして乗れなくなる前に、行かなくては。

(K&Bパブリッシャーズ 1870円)

【連載】GRAPHIC

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    DeNA構想外の藤浪晋太郎を拾いそうな「意外な2球団」 “瀕死の剛腕”にはこれだけの魅力

  2. 2

    水前寺清子(4)気をつけていることといったら、「自分の心と違うことは言わない」ぐらいかな

  3. 3

    伊原陵人の女性トラブル報道と関係が? 阪神の若手有望株を巡る“不可解な塩漬け”

  4. 4

    DeNA藤浪晋太郎はたった1勝なのになぜ? 年俸「5000万→8000万円」大幅増のタネ明かし

  5. 5

    トランプ大統領がハシゴ外し! 高市首相“押しかけ外交”の赤っ恥…「中国は大戦時の同盟国」発言で面目丸潰れ

  1. 6

    藤島ジュリー景子氏「復権の宴」と、「死ぬほど悔しい」と今もむせび泣くジャニー喜多川氏性加害被害者の肉声

  2. 7

    『ペイパーバック・ライター』60年前の日本との実力差を感じる凝った機材セッティング

  3. 8

    錦野旦さん(1)勝新太郎さんに言われた「まねぶ」、ゴルフでもそれが大事だと思っています

  4. 9

    デカすぎた“ゾンビたばこショック”の余波…広島は左右エース&4番がそろってFA流出危機

  5. 10

    バナナマン日村が簡単に復帰できそうにない「もう1つの理由」…レギュラー11本抱える人気者のジレンマ