間違いだらけのデジタル社会

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「システム・エラー社会」ロブ・ライヒほか著 小坂恵理訳

 マイナンバー情報漏洩問題はじめ、デジタル社会はエラーだらけだ。

  ◇  ◇  ◇

「システム・エラー社会」ロブ・ライヒほか著 小坂恵理訳

 テクノロジーは人間の未来を明るくする、などというのはとうの昔の幻想。それこそ「ショーワの夢」である。そんなことは先刻承知のはずなのに世の中はデジタル化を妄信するばかり。本書はこんな文明の現状を憂うるスタンフォード大の哲学者らによる「『最適化』至上主義の罠」(副題)に対する厳しい警告だ。

 デジタル時代の「最適化」とは要するに「効率化」のこと。それはエンジニアの理想だ。しかし、すべての人間はエンジニアではなく、エンジニアの価値観を共有してもいない。

 本書は、人間が生きるための必須の栄養素をすべてそなえた粉末食品を開発した1960年代の例からアルゴリズムこそが全体の意思を最も公平に反映していると考える現代のベンチャーキャピタルの例まで、古今さまざまな経験を豊富に活用し、ベンチャー業界で「破壊的イノベーション」と持ち上げられる効率追求の現状が、民主主義と対立するさまを論じてゆく。

 ことに、インターネットに蔓延するニセ情報は一般人にとってはきわめてリスクの高い落とし穴。それを見分けるための努力は果たしてどこまで「効率的」たり得るのか。

 最適化とは一握りのエリートに奉仕するためのものではないかと思われてならない。

(NHK出版 2970円)

「『意識高い系』資本主義が民主主義を滅ぼす」カール・ローズ著 庭田よう子訳

「『意識高い系』資本主義が民主主義を滅ぼす」カール・ローズ著 庭田よう子訳

 アメリカでトランプや“ミニ・トランプ”の異名を持つデサンティスらが盛んに攻撃するのが「ウォーク」。「めざめた連中」の意味でこれを日本語にすると「意識高い系」になる。もちろん揶揄と皮肉の呼び名だ。

 近ごろの起業家やベンチャーキャピタリストたちは「多様性」「女性活躍」「人生100年時代」などはやりのキャッチフレーズに理解を示し、公言もする。たとえば、楽天の三木谷浩史CEOはロシア侵攻後のウクライナにぽんと10億円を寄付するなど「意識高い系」の見本。しかし、高所得層への税負担増には反対。要は、スタンドプレーなのだ。

 本書はオーストラリアで企業と市民社会の問題を専門とする学者による現代の資本主義論。新自由主義の方便としてデジタル化を利用する現代の資本家たちの自己中心主義をあますところなく批判している。

(東洋経済新報社 2640円)

「2035年の世界地図」マルクス・ガブリエルほか著

「2035年の世界地図」マルクス・ガブリエルほか著

 デジタル社会のいちばんの問題はスピードアップするばかりの効率化が格差を広げ、資本主義をより貪欲に解き放ち、民主主義を空洞化していくことだろう。世界の著名知識人に文明の今後を鋭く問いかける本書は、冒頭で「まもなく民主主義が寿命を迎える」と直言する。

 フランスの社会学者エマニュエル・トッドはどの国でも教育格差が広がり、それが階層化につながって「不平等の感覚」を広めているという。「非平等主義的潜在意識」が社会を分断させ、修復不可能な状態へと促しているのだ。コロナ明けでほっとした空気が漂う中、パンデミックの陰に隠れていた不平等が噴き出そうとしている。

 トッドやガブリエルのほかジャック・アタリ、ブランコ・ミラノビッチに加えて日本の論客の対談や討論など盛りだくさんの内容だ。

(朝日新聞出版 935円)

【連載】本で読み解くNEWSの深層

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