野坂昭如さんへの愛と献身…暘子夫人が語った介護の日々

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「ウソツキ!」

 といった具合で盛り上げる。入浴中も、歌を歌うなどして、脳に元気を与えた。

「不思議なことに、日本語の歌詞は忘れるのに、フランス語の原曲の歌詞がスラスラと出るのです」という。そして、野坂さんが倒れる少し前、「はい」と一枚の原稿用紙をプレゼントされたと告白。それはエディット・ピアフ「愛の讃歌」の詩。訳詩ではなく、ピアフのメロディーにのせて、妻への思いの丈をつづったものであった。

♪空を飛ぶ鳥の 離れてまた出逢う 気ままな遊びはもう出来ないの 胸を破れて裂け 恋しい命がけ ほしいあなただけ あなたのありったけ

 野坂さんは作家になる前、シャンソンを歌っていたことがあり、「銀巴里」で美輪明宏の前座を務めたことも。その頃のメロディーや思い出が、野坂さんを生かしていたのかも知れない。

「今の世の中が自分の経験したあのときの空気、匂いに似ている」と、世情を憂い、日本の行く末に危機感を募らせていた野坂さん。ワガママ爺さんのようでいて、「私が『発言するのはあなたでしょ!』と言うと、ここだけは素直に『はい』と返事をしました」と話していた。

「先日も野坂も連れて沖縄の海を見に行ってきました。沖縄を思い続ける野坂です。『何を飲みますか』と聞くと『ビール』。娘と顔を見合わせ、孫が『ハイッ』とプレゼント。貝がらです」

 野坂さんは静かに笑っていたそうだ。

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