各局で続々放送も 「清張ドラマ」人気の裏に一抹の“不安”
松本清張原作のテレビドラマ化が相次いでいる。先週は「地方紙を買う女」と「黒い樹海」がテレビ朝日系で放映された。今後は3月30日がテレビ東京系の「喪失の儀礼」で、4月15日がフジテレビ系の「一年半待て」といった具合である。
なぜ今、松本清張なのかといえば、ある程度の視聴率が見込めるからだろう。清張の知名度は作家のなかでも抜群だ。良質なサスペンスへの期待感は高い。
一方で、サスペンスの企画がマンネリ化してきたこともある。刑事もの、医療ものなど多くがやりつくされている。連続ものはともかく、スペシャルものとなれば、練りに練られた話の展開をもつ清張もので勝負に出たいということだろう。
ただ、清張の大のファンとしてはひとつ危惧もある。清張ドラマは昭和という時代背景を色濃くもち、それが話の展開のなかで重要な役割を果たしている。昭和だから、話のつじつまが合う作品も多いのだ。
それが「地方紙を買う女」と「黒い樹海」を見たかぎりでは、話は現代に移し替えられ、昭和の影などみじんもない。それでもかまわないが、清張作品のもつ情感の度合いがえらく後退してしまって、筋だけをなぞっている感が強いのである。