絶望と恐怖 「ハクソー・リッジ」が描いた戦争のリアル
沖縄戦の激戦地、前田高地の戦いにおける感動の実話を描いた戦争映画「ハクソー・リッジ」が話題になっている。「ハクソー・リッジ」とは“のこぎりで切ったような断崖”を意味する前田高地の米軍側の呼称。150メートルの絶壁の頂上を日米両軍が奪い合う壮絶な戦闘シーンは、肉片と血しぶきが飛び交う地獄絵図のごとき残酷描写で、内外の批評家が「プライベート・ライアン」(98年)のノルマンディー上陸シーン以来の壮絶さと太鼓判を押している。激しい演出の意図について映画批評家の前田有一氏がこう解説する。
「監督のメル・ギブソンは、スコットランド独立の戦いを凄惨な戦闘描写で見せた『ブレイブハート』や、ショック死する観客まで出たキリストの拷問シーンで物議をかもした『パッション』など、R指定を怖がらない挑発的な演出が評価されています。日本ではPG―12指定となった本作でも、極力CGを使わず本物の爆発の中で役者たちを演技させ、戦場のリアリティーを表現しようとしています」