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碓井広義メディア文化評論家

1955年長野県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。千葉商科大学大学院政策研究科博士課程修了。博士(政策研究)。81年テレビマンユニオンに参加。以後20年、ドキュメンタリーやドラマの制作を行う。代表作に「人間ドキュメント 夏目雅子物語」など。慶應義塾大学助教授などを経て2020年3月まで上智大学文学部新聞学科教授。専門はメディア文化論。著書に「倉本聰の言葉―ドラマの中の名言」、倉本聰との共著「脚本力」ほか。

バリカンで髪の毛を刈り込んだ 池松壮亮の役者根性に拍手

公開日: 更新日:

 懐かしいタイトルだ。テレビ東京系で放送中のドラマ25「宮本から君へ」。新井英樹の原作漫画が「モーニング」に連載されていたのは1990年代前半。まだバブルの余韻も残る時期に、汗くさくて泥くさくて暑苦しい新人営業マンの物語がヘンに新鮮だった。

 主人公は文具メーカー「マルキタ」営業部の宮本浩(池松壮亮)。仕事も恋愛も不器用で、力が入りっぱなしの空回りばかりだ。仕事では結果が出ないし、受付嬢の美沙子(華村あすか)や先輩・神保(松山ケンイチ)の仕事仲間である靖子(蒼井優)との恋愛も一筋縄ではいかない。

 しかしドラマの後半戦に入って、宮本は俄然仕事に燃え始めた。ライバル会社の益戸(浅香航大)や仲卸会社の島貫部長(酒井敏也)といった立ちはだかる壁の存在が効いて、一気に「仕事ドラマ」としてヒートアップしてきたのだ。

 先週は原作でも話題となった名場面「怒涛の土下座」が満を持して登場した。必要な見積りを書いてくれない島貫に対し、街中で土下座する宮本。歩み去ろうとする島貫の前に回り込み、土下座を繰り返す姿は、はなはだみっともなくて、とてつもなくカッコいい。

 アスファルトの路面にこすりつける宮本の頭は、仕事上の失敗を反省した丸坊主だ。原作通りとはいえ、電気バリカンで自分の髪の毛を刈り込んだ池松の役者根性に拍手である。その熱量を今週の最終回まで見届けたい。

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