大高宏雄
著者のコラム一覧
大高宏雄映画ジャーナリスト

1954年浜松市生まれ。明治大学文学部仏文科卒業後、(株)文化通信社に入社。同社特別編集委員、映画ジャーナリストとして、現在に至る。1992年からは独立系を中心とした邦画を賞揚する日プロ大賞(日本映画プロフェッショナル大賞)を発足し、主宰する。著書は「昭和の女優 官能・エロ映画の時代」(鹿砦社)など。

政治や社会意識が薄れる今こそ戦争名画をみて考えてみる

公開日: 更新日:

 敗戦の日という言い方もできるが、まもなく、終戦の日がやって来る。この時期になると、戦争映画や社会派の問題作を連続して上映する映画館が都内にある。名画座の新文芸坐(豊島区東池袋)だ。今年も8月5日からスタートするが、この上映の催しが始まったのは1978年。節目の40年目を迎える。

 戦争、軍隊、原爆、冤罪などを描く映画を通して、歴史や社会を考えようというのが上映の趣旨だ。今回は「日本戦歿学生の手記 きけ、わだつみの声」(50年)、「真空地帯」(52年)、「真昼の暗黒」(56年)、「帝銀事件 死刑囚」(64年)、「日本のいちばん長い日」(67年)、「軍旗はためく下に」(72年)など映画史上の名作群が並んだ。

 なかでも吉永小百合主演の「キューポラのある街」(62年=写真)が、彼女のトークショー付きで上映されるから勧めたい(10日)。吉永扮する少女ジュンが、鋳物の街・川口で貧困と向き合っていくけなげでハツラツとした姿がとても感動的な作品だが、こんなシーンに打ちのめされた記憶がある。ジュンが工場を解雇され、家でぶらぶらしながら「戦争がまた起これば、景気は良くなる」などとうそぶく父(東野英治郎)に猛然と歯向かうのだ。ジュンの態度は太平洋戦争を支えた父世代が、何の反省もなく戦後をだらだらと生きていることへの痛烈な一撃でもあって、忘れがたいのである。

「キューポラ――」はじめ、一度は見たことのある作品が多いだろうが、政治や社会意識が薄れている今だからこそ、突き刺さってくる側面も確実にある。災害の問題も身近だ。

 改めて、映画を通して政治や社会を考えるひと夏にしてみたらどうだろうか。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1
    花巻東時代は食トレに苦戦、残した弁当を放置してカビだらけにしたことも

    花巻東時代は食トレに苦戦、残した弁当を放置してカビだらけにしたことも

  2. 2
    「ダルよりすごい」ムキムキボディーに球団職員が仰天!プロ3、4年目で中田翔より打球を飛ばした

    「ダルよりすごい」ムキムキボディーに球団職員が仰天!プロ3、4年目で中田翔より打球を飛ばした

  3. 3
    裏金自民に大逆風! 衆院3補選の「天王山」島根1区で岸田首相の“サクラ”動員演説は大失敗

    裏金自民に大逆風! 衆院3補選の「天王山」島根1区で岸田首相の“サクラ”動員演説は大失敗

  4. 4
    22年は尻回りが推定1.5倍に増大、投げても打ってもMLBトップクラスの数値を量産した

    22年は尻回りが推定1.5倍に増大、投げても打ってもMLBトップクラスの数値を量産した

  5. 5
    若林志穂が語った昭和芸能界の暗部…大物ミュージシャン以外からの性被害も続々告白の衝撃

    若林志穂が語った昭和芸能界の暗部…大物ミュージシャン以外からの性被害も続々告白の衝撃

  1. 6
    橋下徹氏&吉村知事もう破れかぶれ?万博の赤字に初言及「大阪市・府で負担」の言いたい放題

    橋下徹氏&吉村知事もう破れかぶれ?万博の赤字に初言及「大阪市・府で負担」の言いたい放題

  2. 7
    WBCの試合後でも大谷が227キロのバーベルを軽々と持ち上げる姿にヌートバーは舌を巻いた

    WBCの試合後でも大谷が227キロのバーベルを軽々と持ち上げる姿にヌートバーは舌を巻いた

  3. 8
    大谷の2023年は「打って投げて休みなし」…体が悲鳴を上げ、右肘靭帯がパンクした

    大谷の2023年は「打って投げて休みなし」…体が悲鳴を上げ、右肘靭帯がパンクした

  4. 9
    「横浜愛」貫いた筒香嘉智 巨人決定的報道後に「ベイスターズに戻ることに決めました」と報告された

    「横浜愛」貫いた筒香嘉智 巨人決定的報道後に「ベイスターズに戻ることに決めました」と報告された

  5. 10
    河野太郎大臣「私は関わっておりません」 コロナワクチン集団訴訟で責任問う声にXで回答…賛否飛び交う

    河野太郎大臣「私は関わっておりません」 コロナワクチン集団訴訟で責任問う声にXで回答…賛否飛び交う