著者のコラム一覧
大高宏雄映画ジャーナリスト

1954年浜松市生まれ。明治大学文学部仏文科卒業後、(株)文化通信社に入社。同社特別編集委員、映画ジャーナリストとして、現在に至る。1992年からは独立系を中心とした邦画を賞揚する日プロ大賞(日本映画プロフェッショナル大賞)を発足し、主宰する。著書は「昭和の女優 官能・エロ映画の時代」(鹿砦社)など。

「万引き家族」パルムドール受賞が導く邦画実写作品の未来

公開日: 更新日:

 大快挙だ。是枝裕和監督の「万引き家族」が、第71回カンヌ国際映画祭で最高賞のパルムドールを受賞したことである。アジア映画としても画期的で、2000年以降では「ブンミおじさんの森」(タイ)に次いで2回目。中国韓国の作品は1本もない。受賞はアジア圏全体が誇っていいことだ。

 家族がテーマだと聞いて思い出した監督が2人いた。小津安二郎と大島渚だ。2人は家族を描くのに両極端だった。小津監督は日本の家族そのものの姿を独特の様式美を通して描き続けた。大島監督は家族にこだわってきたわけではないが、社会との関係性を生々しく描いた傑作「少年」(1969年)を作った。

 重要なのは、是枝監督がどちらの系譜にくみするのかといった話ではない。受賞作だけではない是枝監督の独自な作風が、世界視野の最高の境地に立ち至ったことだ。彼が描く日本の家族像が普遍的な共感の度合いを強め、そこで提出された問題意識の共有にもつながった。それが凄いと思うのだ。

 大島の「少年」は、賠償金狙いの当たり屋家族を描いた。この作品も国内外で高く評価された。ひょっとして、「万引き家族」は「少年」からインスパイアされたのかもしれない。そんなつながりを考えるだけで、わくわくしてくるものがある。

 今回のパルムドール受賞は、邦画の実写作品に計り知れない影響を与えるだろう。五輪で金メダルを取ったようなものだから、同じように目指す若者が増えるとみる。裾野が広がってこそ映画の活力も増す。アニメーションに若者が群がる時代だ。実写作品で世界を制した意味の大きさを強く思う。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    「マラソン」と「大腸がん」に関連あり? ランナー100人への調査結果が全米で大きな波紋

  2. 2

    “マトリ捜査報道”米倉涼子の圧倒的「男運」のなさ…海外から戻らないダンサー彼氏や"前科既婚者"との過去

  3. 3

    「えげつないことも平気で…」“悪の帝国”ドジャースの驚愕すべき強さの秘密

  4. 4

    大阪・関西万博「最終日」現地ルポ…やっぱり異常な激混み、最後まで欠陥露呈、成功には程遠く

  5. 5

    米倉涼子“自宅ガサ入れ”報道の波紋と今後…直後にヨーロッパに渡航、帰国後はイベントを次々キャンセル

  1. 6

    アッと驚く自公「連立解消」…突っぱねた高市自民も離脱する斉藤公明も勝算なしの結末

  2. 7

    新型コロナワクチン接種後の健康被害の真実を探るドキュメンタリー映画「ヒポクラテスの盲点」を製作した大西隼監督に聞いた

  3. 8

    巨人の大補強路線にOB評論家から苦言噴出…昨オフ64億円費やすも不発、懲りずに中日・柳&マエケン狙い

  4. 9

    元体操選手の鶴見虹子さん 生徒200人を抱える体操教室を経営、“アイドル”も育成中

  5. 10

    地上波連ドラ3年ぶり竹内涼真に“吉沢亮の代役”の重圧…今もくすぶる5年前の恋愛スキャンダル