前作ワンピース以上 新作歌舞伎の意義示した「ナルト」
歌舞伎座の新作「東海道中膝栗毛」は猿之助と幸四郎を中心に、「話題の美少年」染五郎をはじめ、大人数が出演する豪華版。しかしパロディーに終始するので、見ていて楽しいが、何も残らない。若手が大役を演じる場として納涼歌舞伎は始まったのだから、今回パロディーにした演目を本気で上演して欲しい。
歌舞伎座でいちばん見応えがあったのは、鶴屋南北作「盟三五大切」だ。結局、古典なのだ。新作でも第1部の古典落語をベースにした「心中月夜星野屋」が、人物像と物語の骨格がしっかりしているので、演劇としての満足度が高い。
納涼歌舞伎は亡くなった勘三郎と三津五郎が始めたもので、その息子たちが後を継いだはずだが、今年は勘九郎は出演せず(来年の大河ドラマの収録らしい)、巳之助は新橋演舞場に出ているので、創業家の役者は七之助しかいない。座組・演目とも、含めて当初の意図とは異なり、迷走しているように感じた。変化するのはいいが、誰が主導し責任を持ち、どういうコンセプトでやっていきたいのか明確にして欲しい。
(作家・中川右介)