著者のコラム一覧
山田勝仁演劇ジャーナリスト

KAAT「華氏451度」 無機質な現代の日本社会へ警鐘を鳴らす

公開日: 更新日:

 知性の劣化は、真実より耳あたりのいいウソがもてはやされるポスト・トゥルースの時代を呼び起こした。

 舞台では密告が奨励され市民が相互監視する。「もはや本を焼かなくても大衆は自発的に読書をやめている」というセリフがあるが、それはネットで悪意がばらまかれ、同調圧力と忖度が横行し、放送規制しなくても報道機関が政権におもねって自主規制している日本そのものではないか。

 3方から観客を威圧するかのようにそびえる巨大な書架の舞台美術。知の象徴であると同時に消滅する哀しみを内在している。それゆえ、プロジェクションマッピング(CG)で本棚が燃え上がるシーンは恐ろしく、そしてはかなく美しい。

 役者が1人で数役を演じるスピーディーでスタイリッシュな演出は白井晃の真骨頂。無機質な暗黒社会とその先にある希望を的確に表現していた。

 上演台本は長塚圭史。14日までKAAT(神奈川芸術劇場)。

 ★★★★

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    高画質は必要ない? 民放各社が撤退検討と報じられた「BS4K」はなぜ失敗したのですか?

  2. 2

    気温50度の灼熱キャンプなのに「寒い」…中村武志さんは「死ぬかもしれん」と言った 

  3. 3

    広陵暴力問題の闇…名門大学の推薦取り消し相次ぎ、中井監督の母校・大商大が「落ち穂拾い」

  4. 4

    巨人阿部監督はたった1年で崖っぷち…阪神と藤川監督にクビを飛ばされる3人の監督

  5. 5

    (4)指揮官が密かに温める虎戦士「クビ切りリスト」…井上広大ら中堅どころ3人、ベテラン2人が対象か

  1. 6

    U18日本代表がパナマ撃破で決勝進出!やっぱり横浜高はスゴかった

  2. 7

    日本ハム・レイエスはどれだけ打っても「メジャー復帰絶望」のワケ

  3. 8

    志村けんさん急逝から5年で豪邸やロールス・ロイスを次々処分も…フジテレビ問題でも際立つ偉大さ

  4. 9

    佐々木朗希いったい何様? ロッテ球団スタッフ3人引き抜きメジャー帯同の波紋

  5. 10

    (2)事実上の「全権監督」として年上コーチを捻じ伏せた…セVでも今オフコーチ陣の首筋は寒い