「女が愛して憎むとき」若尾文子と田村二郎にみる男女の業

公開日: 更新日:

 美人ママは高根の花。われわれサラリーマンも銀座のママを見ると「どんなセックスをしてるのか」「あの肉体を何人の男が通りすぎたのか」と妄想をたくましくしてしまう。だから敏子は慎重を期して尾関をアパートに呼ばず、自ら東京に出向く。こうした水商売の裏側が興味深い。

 敏子は尾関を敬慕して金銭援助も結婚も求めない。そこに漂うのは「依存関係」だ。女が一人で店を経営するのは心細く、心のよりどころが欲しい。頭の切れる尾関は頼もしい存在だ。だから経理の相談に乗ってもらう。

 だが尾関は切羽詰まって敏子のカネに手をつけ、苦し紛れの言い訳で不用意な一言を吐いてしまう。2人の間に亀裂が生じ、敏子は一人で生きる道を選ぶが、本当にこれで終わりだろうか。誰かに頼りたがるのが女の弱さであるなら、いずれまた尾関を求めるだろう。ラストで見せる敏子の晴れやかな表情は「別れられない女」を予感させるのだ。

(森田健司)

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ドジャース佐々木朗希の心の瑕疵…大谷翔平が警鐘「安全に、安全にいってたら伸びるものも伸びない」

  2. 2

    ドジャース「佐々木朗希放出」に現実味…2年連続サイ・ヤング賞左腕スクーバル獲得のトレード要員へ

  3. 3

    ドジャース大谷翔平32歳「今がピーク説」の不穏…来季以降は一気に下降線をたどる可能性も

  4. 4

    ギャラから解析する“TOKIOの絆” 国分太一コンプラ違反疑惑に松岡昌宏も城島茂も「共闘」

  5. 5

    巨人が李承燁コーチ就任を発表も…OBが「チグハグ」とクビを傾げるFA松本剛獲得の矛盾

  1. 6

    国分太一問題で日テレの「城島&松岡に謝罪」に関係者が抱いた“違和感”

  2. 7

    今度は横山裕が全治2カ月のケガ…元TOKIO松岡昌宏も指摘「テレビ局こそコンプラ違反の温床」という闇の深度

  3. 8

    国分太一“追放”騒動…日テレが一転して平謝りのウラを読む

  4. 9

    ドジャース首脳陣がシビアに評価する「大谷翔平の限界」…WBCから投打フル回転だと“ガス欠”確実

  5. 10

    大谷翔平のWBC二刀流実現は絶望的か…侍J首脳陣が恐れる過保護なドジャースからの「ホットライン」