著者のコラム一覧
大高宏雄映画ジャーナリスト

1954年浜松市生まれ。明治大学文学部仏文科卒業後、(株)文化通信社に入社。同社特別編集委員、映画ジャーナリストとして、現在に至る。1992年からは独立系を中心とした邦画を賞揚する日プロ大賞(日本映画プロフェッショナル大賞)を発足し、主宰する。著書は「昭和の女優 官能・エロ映画の時代」(鹿砦社)など。

菅田将暉 かつての「8・15シリーズ」大役級を軽やかに好演

公開日: 更新日:

 公開中の「アルキメデスの大戦」が、全く意表をつく中身だった。太平洋戦争前、数学の天才が戦艦大和の建造を阻止する話というのは予告編などで知っていた。だがまさか、その話のみで押し切る作品とは思ってもみなかったからだ。

 本作は、戦争を題材にした娯楽大作である。本来なら、昔でいう特撮、今のCG技術を駆使した戦闘シーンを見せ場としてもおかしくない。だが、数学の実証的な見地から戦艦大和の建造の欠陥部分を暴くことが、作品の本筋になっていた。

 若き天才数学者を、菅田将暉が演じる。かつての東宝の夏作品「8・15シリーズ」の主役を張るようなものだから大役である。その彼が、オーバーアクションをギリギリのところで回避し、全体として軽やかに演じていた印象があって、非常に好感が持てた。

 山本五十六役の舘ひろしはじめ、海軍の重鎮たちを國村隼、橋爪功、田中泯らが演じる。彼らの重厚にして安定感抜群の演技力と、菅田は絶妙な対峙関係をつくっていたと思う。権力に迎合せず、わが道を邁進する自信と力強さ、その双方を兼ね備える若者を過不足なく演じて見事だった。

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