著者のコラム一覧
大高宏雄映画ジャーナリスト

1954年浜松市生まれ。明治大学文学部仏文科卒業後、(株)文化通信社に入社。同社特別編集委員、映画ジャーナリストとして、現在に至る。1992年からは独立系を中心とした邦画を賞揚する日プロ大賞(日本映画プロフェッショナル大賞)を発足し、主宰する。著書は「昭和の女優 官能・エロ映画の時代」(鹿砦社)など。

平日のミニシアターが満席「新聞記者」は声なき声を拾った

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 この混み具合は何だ。都内のミニシアターを訪れると、平日の午後にもかかわらず満席で、夕方近くの回にやっと入ることができた。作品は話題の「新聞記者」だ。年配者が多いが、ひとりで来ている若い女性もいる。館数が限られているなかで、全国興収は4億円突破が近い。大したものだ。

 映画は、望月衣塑子氏の「新聞記者」を原案にしている。特区に設置が予定された医療系大学をめぐる謀略、官邸寄りのジャーナリストによるレイプ疑惑など、現実の事象を彷彿とさせる話を盛り込む。主人公は、所属する組織の横暴に疑問を持ち始める内閣情報調査室の青年(松坂桃李)と、さきの謀略を暴こうとする女性新聞記者(シム・ウンギョン)だ。

 堂々たるヒットの背景には、現政権に対して、少なからぬ人びとが抱いているモヤモヤ感が関係していると感じた。それがあるから、映画に関心を持ったに違いない。

 本作の重要性は現実の職場や日常生活などではなかなか見えてこない、よどんだようなモヤモヤ感をあぶりだしたことである。映画が、現政権に対するモヤモヤ感のよってきたるところを少しでもスッキリさせてくれるのではないか。そんな観客たちの声なき声が、館内のあちこちから聞こえてくる気さえした。上映館は上映終了まで、ちょっとした緊張感に包まれていた。

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