著者のコラム一覧
井筒和幸映画監督

1952年12月13日、奈良県出身。県立奈良高校在学中から映画製作を始める。75年にピンク映画で監督デビューを果たし、「岸和田少年愚連隊」(96年)と「パッチギ!」(04年)では「ブルーリボン最優秀作品賞」を受賞。歯に衣着せぬ物言いがバラエティ番組でも人気を博し、現在は週刊誌やラジオでご意見番としても活躍中。

香港市民よ「イージー・ライダー」が目指した“自由”を掴め

公開日: 更新日:

 もう先週のことになるが、我らの愛すべきアメリカン・ニューシネマの傑作「イージー・ライダー」の製作者でもあり、主人公の1人、キャプテン・アメリカ役を演じた、ピーター・フォンダが肺がんでこの世を去った。「君たちも映画を作ったらどうだ?」と青春の夢を与えてくれた人だ。ここで改めて感謝したい。

 それは1970年の正月明けの公開で、17歳になったばかりの高校2年の我らは、大阪の梅田地下劇場で完全に打ちのめされ、ノックダウンだった。どんなに映画に感動しようと、上映後にしばらく座席から立てなかったのはこの「気ままなバイク乗り」が最初だ。翌日は当然、学校なんて行く気もしなかった。主人公たちが皆、殺されて終わるなんて、それまであり得なかった。あの衝撃は他にない。

 メキシコから麻薬を密輸して大金を稼ぎ、アメリカの「自由」を探しに、ロスから南部のニューオーリンズの謝肉祭を目指して旅をする3人組。ロサンゼルスをLAと言うのも初めて知ったし、3人がたき火を囲んでマリフアナを吸い回し、「自由」について語り合う場面さえドキドキした。本物の大麻を吸って撮影したと聞いていたからだ。「フリーダム」という言葉が語られた。彼とデニス・ホッパー(既に故人)がチョッパーバイクの旅の道中で拾った若い弁護士も、マリフアナを吸いながら熱弁した。演じたのは名も知らない新人ジャック・ニコルソンだ。「アンタらのその長髪や格好が象徴する『自由』ってやつをこの国は一番恐れてるんだ」と。法の下の制約付き自由「リバティー」じゃなく、誰からも妨害されず個人の意思で行動するのが「フリーダム」。英語の授業より先に、我らは銀幕で教えられた。ステッペンウルフの楽曲「ワイルドでいこう!」や「ザ・プッシャー」「ザ・ウェイト」、ジミ・ヘンドリックスも心に突き刺さった。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    梅宮アンナ「10日婚」短期間で"また"深い関係に…「だから騙される」父・辰夫さんが語っていた恋愛癖

  2. 2

    「時代と寝た男」加納典明(19) 神話レベルの女性遍歴、「機関銃の弾のように女性が飛んできて抱きつかれた」

  3. 3

    砂川リチャード抱える巨人のジレンマ…“どうしても”の出血トレードが首絞める

  4. 4

    日テレ退職の豊田順子アナが定年&再雇用をスルーした事情…ベテラン局アナ「セカンドキャリア」の明と暗

  5. 5

    “バカ息子”落書き騒動から続く江角マキコのお騒がせ遍歴…今度は息子の母校と訴訟沙汰

  1. 6

    中学受験で慶応普通部に合格した「マドラス」御曹司・岩田剛典がパフォーマーの道に進むまで

  2. 7

    吉沢亮「国宝」が絶好調! “泥酔トラブル”も納得な唯一無二の熱演にやまぬ絶賛

  3. 8

    阿部巨人“貧打の元凶”坂本勇人の起用に執着しているウラ事情…11日は見せ場なしの4タコ、打率.153

  4. 9

    ドジャース佐々木朗希の離脱は「オオカミ少年」の自業自得…ロッテ時代から繰り返した悪癖のツケ

  5. 10

    フジ・メディアHD株主総会間近…328億円赤字でも「まだマシ」と思える系列ローカル局の“干上がり”ぶり