ジョン・チェスター監督「これからの農業は自然との共生」
セカンドライフを考える中高年サラリーマンの憧れでもある帰農。農薬を一切使わずに挑戦して8年、「息をのむほど美しい」農場をつくり上げたアメリカの夫婦が世界的に評判だ。本業が“映像畑”で、ドキュメンタリー映画「ビッグ・リトル・ファーム 理想の暮らしのつくり方」を監督した夫ジョン・チェスター(48)に聞いた。
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――温暖化が進む環境といい、効率優先社会と逆行するような農業はまだ食べていけるのですか?
「もちろん。自然で栄養価の高い農作物は高いリターンがあり、私たちは通常の3倍もの利益を得ています。人気のたまごは50パックが1時間ほどで売り切れてしまうんですよ。そもそも、農業はまだ終わってないし、むしろ時代の最先端だと思っています。私たちはロス郊外の200エーカー(東京ドーム17個分)もの荒れ果てた土地を耕すことからはじめたのですが、土壌の有機物質が1%増えると、1エーカー分で実に21トンもの二酸化炭素を吸収する。温暖化にも打ち勝てます」
――とはいえ場所探しから大変そうだし、失敗するリスクを考えたら、尻込みしそうです。
「産業や経済、それこそ効率優先の尺度でみたら、無謀な挑戦かもしれない。ただ、映画にも撮った8年間365日の日々で身をもって知ったのが、私たち人間の背後に広がる自然のルーティン、太古からの階層システムです。そこを注意深く観察し、法則に謙虚に従っていけば次に何が起こるか予想することができる。最終的には報われる世界だということです。サラリーマンのような週休2日とはいきませんけど、そうした人生とまるで違う、やればイノベーターになることができます」