大高宏雄
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大高宏雄映画ジャーナリスト

1954年浜松市生まれ。明治大学文学部仏文科卒業後、(株)文化通信社に入社。同社特別編集委員、映画ジャーナリストとして、現在に至る。1992年からは独立系を中心とした邦画を賞揚する日プロ大賞(日本映画プロフェッショナル大賞)を発足し、主宰する。著書は「昭和の女優 官能・エロ映画の時代」(鹿砦社)など。

コロナ禍で苦境の映画界…ミニシアター館長が明かす胸の内

公開日: 更新日:

 東京など7都府県に緊急事態宣言が出たことで、週末(土・日曜)に営業を停止していた都内をはじめとする多くの映画館は4月8日から長期の休業に入った。これでますます、映画館の窮状が続くだろう。

 すでに個々の映画館の現状がメディアで報道されているが、何も都内や大都市に限った話ではない。比較的、新型コロナの感染者が少ないとされる地方でも映画館の形態や大小にかかわらず、厳しい現実を迎えている。とくに経営基盤が弱いミニシアターとなると、そのダメージは映画館の存続にかかわってくるほどだ。

 人口約80万人の浜松市のミニシアター、シネマイーラもそのひとつといっていい。静岡県は4月8日時点で感染者は31人だが、県内でも映画館へ足を運ぶのを控える人たちが続出している。

 同館の榎本雅之館長が、厳しい胸の内を語る。

「4月に入って以降では、1日に6作品を交互に上映していますが、平日は10人台から20人台の動員で、土・日曜も少し増える程度です。1作品あたりでは来館者が1人、2人の回もあります。当館では、家賃、人件費、電気代などを含めた月の固定経費が260万円ほど。これに加え、配給会社に支払う映画料もかかります。このままでは4月の売上(興収)は100万円に届くかどうか。とても払いきれません。現在、家賃交渉をしていますが、どこまで下げてもらえるか……。給付金の助成も視野に入れていますが、条件をクリアできるか。支給の時期もいつになるか全く分かりません。それまで、どうやってやり繰りするかといった状況です。もう"待ったなし"まで来ています」

 同館に資金的な余裕はない。コロナ禍以前もギリギリの状態で運営を続けている。このような経営状態は、中小規模のミニシアターなら大都市も地方も大きくは変わらない。

映画人もプロジェクトを始動

 映画人も動き始めた。深田晃司監督や濱口竜介監督が提唱した「ミニシアター・エイド基金」というクラウドファンディングの立ち上げと、諏訪敦彦監督らが中心になって政府への緊急支援を求める「ミニシアターを救え!」プロジェクトだ。後者では、すでに多くの賛同者が名を連ねている。この2つは連携して行動をともにする。

 ただ、苦境に陥っているのはミニシアターだけではないのも事実だ。大手のシネコンとミニシアターの中間にあるような中小規模の数多い映画館も同様である。支援の輪は、もっと広げていく必要もあるのではないか。

 前出の浜松のシネマイーラは、独自のクラウドファンディングを準備中だという。ミニシアターには今、自身の映画館で単独でできること、そして、映画人たちが動いている支援の輪に加わることの両輪が求められているといえようか。

 個と全体がひとつになって、対峙していくことが重要だ。1館たりとも閉館に追い込んではいけない。従業員も失職させてはいけない。「映画文化」の重要性もさることながら、娯楽の文化もまた、とても大切なことと考える。映画にかかわる人たちの底力を見せるときだ。映画を愛する多くの人のご協力もお願いしたいと思う。

(映画ジャーナリスト・大高宏雄)

「ミニシアター・エイド基金」
https://minitheater-aid.org/

「ミニシアターを救え!」プロジェクト公式Twitter
https://twitter.com/save_the_cinema

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